中国における就学前教育のカリキュラム改革のイメージ

著者
盧中潔 著
発行年月日
2023/12/15
頁数
268頁
判型
A5
ISBNコード
978-4-7599-2491-6

中国における就学前教育のカリキュラム改革

2000年以降の幼児園教材における「言語」領域の分析を手がかりに

定価7,700(本体 7,000円+税)

2000年以降、「人的資源」の確保と「子どもを中心に」という二つの枠組みが存在する中国で、就学前教育で幼児期に求められる言語能力はどのようなものかを明らかにする。

【著者略歴】

盧中潔(LU ZHONGJIE)

浙江師範大学講師(児童発展与教育学院学前教育系)

2020年お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科博士課程修了。

博士(社会科学)。

主著・主要論文

『現代中国の子育てと教育』(共著、矢藤優子・吉洪・孫怡編、ナカニシヤ出版、2023)、「幼児園教材の変化から見る上海市の就学前教育のカリキュラム改革―年長児向けの教材における「言語」領域の変化に着目して―」(『国際幼児教育』Vol. 26. pp. 65-78. 2019)等

目次を表示

序章

第一節 問題の所在

第二節 先行研究の検討

一 カリキュラムに関する研究

二 中国の就学前における「言語」領域に関する研究

三 中国における就学前教育のカリキュラム改革に関する研究

第三節 本研究の目的と構成

一 先行研究の到達点

二 本研究の目的とリサーチクエスチョン

三 本研究の構成

第一章 中国の幼児園教材

第一節 中国における幼児園教材の概況

一 幼児園教材の定義

二 幼児園教材の使用状況

第二節 中国における幼児園教材の開発と審査制度

一 幼児園教材の開発

二 教材審査制度―上海市と北京市を事例に

第二章 中国における就学前教育のカリキュラム改革の変遷

第一節 本章の課題

第二節 清末民初における就学前のカリキュラム(1885~1918)

一 康有為の教育改革

二 日本の影響を受ける時期(1903~1918)

第三節 本土化の時期(1919~1948)

一 就学前教育の「中国化」、「平民化」とデューイの影響

二 南京鼓楼幼稚園のカリキュラム実験

三 「幼稚園カリキュラム標準」(1932)の発行とその特徴

四 幼稚園教材、カリキュラム編成の理論構築:陳鶴琴、陶行知、張雪門の貢献

第四節 ソ連の影響を受ける時期(1949~1965)

一 プラグマティズム、「活教育」、「生活教育」に対する批判

二 50年代のカリキュラム改革:「ソ連を師匠に」

三 「幼児園暫定規程」(1952)、「幼児園暫定教授綱要」(1952)の発行とその特徴

第五節 「幼児園教育指導綱要」(1981)の公表による模索期(1981-1990)

一 経済発展戦略としての教育改革

二 「幼児園教育指導綱要」(1981)の公表とその特徴

第六節 90年代以降の発展期(1991~1999)

一 海外カリキュラムモデルの導入による多角的な発展期

二 「幼児園工作規程」(1996)の公布とその特徴

第三章 就学前教育に関する法律と法規

第一節 本章の課題

第二節 中国の法律と法規

一 法体系

二 就学前教育の法体系

三 まとめ

第三節 地方政府の教育法規と規則

一 分析対象

二 地方レベルの法規と規則

三 まとめ

第四章 沿岸地域のカリキュラム改革

第一節 本章の課題

第二節 上海市の幼児園教材

一 分析対象:『多元的、整合的幼児活動を主とする課程』(少年児童出版社)

二 カリキュラムの特徴とその変容

三 「言語」領域の変化の特徴:小単元「六人の息子」から

四 編集者の観点から

五 まとめ

第三節 北京市の幼児園教材

一 分析対象:『幼児園に向ける快楽と発展の課程』(北京師範大学出版社)

二 カリキュラムの特徴:領域主題型、目標志向

三 「言語」領域の教材内容:伝統文化を中心に

四 「北京細則」(2003)を手がかりに

五 まとめ

第四節 浙江省の幼児園教材

一 分析対象:『幼児園課程指導』(新時代出版社)

二 「言語」領域の強化政策と「読解力」を中心とする統合的カリキュラム

三 言語能力の変遷:小単元「紙の発明」を事例に

四 農村部教材の指定政策―トップダウン型のカリキュラム改革

五 「言語」領域と「読解力」の強化―農村部における競争力の確保

六 まとめ

第五章 内陸地域のカリキュラム改革

第一節 本章の課題

第二節 甘粛省の幼児園教材

一 分析対象:『幼児園総合教育活動』(蘭州大学出版社)

二 総合的カリキュラム

三 小学校入学の準備:「書写力」への重視

四 物事の関連性を中心に:総合的カリキュラムの特徴

五 まとめ

第三節 青海省の幼児園教材

一 分析対象:『養成教育』(青海人民出版社)

二 循環型カリキュラム

三 海外カリキュラムモデルの導入:ラーニングストーリー

四 礼儀教育を中心に

五 地方におけるモデル幼児園をはじめとするカリキュラム改革

六 まとめ

第四節 西北五省の農村地域における幼児園教材

一 分析対象:『多重知能活動開放課程』(農村読物出版社)

二 多重知能カリキュラム

三 表現力を中心とする言語応用能力への重視

四 「活動」による言語能力の獲得:「小さな解説員」を事例に

五 多重知能カリキュラム:プロセス評価を中心とする評価方式

六 まとめ

第六章 中国における就学前教育のカリキュラム改革の特徴

第一節 幼児園教材におけるカリキュラム編成の特徴

一 旧来のカリキュラムからの転換

二 新たに導入された特徴

第二節 「言語」領域:教育内容の特徴

一 都市部と農村部で共に重視される「読解力」

二 「表現力」育成の台頭

三 「書写力」育成の地域差

四 内陸地域:礼儀教育への重視

第三節 カリキュラム改革政策の特徴

一 政府の支援による地域固有の教材の開発

二 国際的動向と2000年代以降の新しい試み

三 幼児園教材の審査制度と編集者の多様性

終章 中国における就学前教育のカリキュラム改革

第一節 結果の概要

一 中国における就学前教育のカリキュラム改革の変遷―第二章―

二 就学前教育に関する法律と法規―第三章―

三 沿岸地域のカリキュラム改革―第四章―

四 内陸地域のカリキュラム改革―第五章―

五 中国における就学前教育のカリキュラム改革の特徴―第六章―

第二節 本研究の貢献と今後の課題

参考文献

参考資料

初出一覧

謝辞