
川端康成作品における〈幻想〉の構造
定価5,500円(本体 5,000円+税)
川端康成作品において様々な様態として現れる〈幻想〉の構造化を通して、〈幻想〉生起の契機の地平を解明。また同時代における自然科学や社会科学等との関係性を見つつ、それらに対して〈幻想〉が持つ批評性を浮き彫りにする。
【著者略歴】
青木 言葉(あおき ことは)
1987年、長野県松本市生まれ。慶應義塾大学文学部卒業、
同大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。
博士(文学、慶應義塾大学)。
現在、鶴見大学等非常勤講師。
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序
第一部 〈幻想〉の生起とその地平
第一章 「幻想」から「象徴」へ――「青い海黒い海」――
一、はじめに
二、〈死〉の反復
三、「新進作家の新傾向解説」との差異及び重なり
四、「第一の遺言」における、きさ子と父の幻想
五、〈からっぽ〉としての〈私〉
六、「りか子の生存の象徴の世界」
七、〈幻想〉から〈象徴〉へ
第二章 運命と時間――「抒情歌」――
一、はじめに
二、〈香〉の効能及び変化
三、『西洋の没落』―〈運命〉と〈因果〉
四、『シペングレルの哲学』
五、龍枝の語る〈語り以前〉
六、〈幻想〉の生れるところ
第二部 同時代諸科学と〈幻想〉
第一章 科学という〈輪廻〉――「花ある写真」――
一、二つの〈科学〉
二、化学・生理学の〈輪廻〉
三、心霊の〈花〉
四、「魂」の互換性
五、「時代」の「祝福」
第二章 マルクス主義と〈形容詞の幽霊〉――「死者の書」――
一、はじめに
二、「死者の書」の周辺
三、「形容詞の幽霊」と「現代の幽霊」
四、『朝鮮民謡の研究』について
五、言葉の現実
第三章 〈性感〉と「愛」――「水晶幻想」――
一、はじめに
二、性的象徴
三、水と陸、海と空、沈下と飛翔
四、化粧、手術、生殖
五、乳幼児の〈性感〉と、「孤独」
六、化粧
七、性感という「愛」
八、文明批判および〈死〉の世界
第三部 認識における本質としての〈幻想〉
第一章 〈古典〉を読み替える――「住吉」三部作――
一、はじめに
二、「末世」的性格の付与と逸脱のきざし
三、しぐれの音と幻の落葉の音
四、「住吉物語」生成史と、個人史の混同
五、〈幻〉の生起
第二章 〈血〉による〈女〉の摂取と奪取、或は浸潤――「片腕」「眠れる美女」――
一、「眠れる美女」というプロローグ
二、「眠れる美女」における三つの禁忌と、〈女〉に犯す三つの「極悪」
三、〈性〉・〈生〉、それぞれの対象の娘たちと〈血〉
四、〈生〉〈性〉を奪う老人たち
五、「片腕」の世界
六、許された〈婚約〉、及び〈行為〉
七、液体化による存在の授受
八、「遠くの自分」と〈ここにいる自分〉
九、〈性〉と〈生〉
第三章 自然の無常と人間の意志――「たんぽぽ」――
一、はじめに
二、言葉と性差
三、言葉と自然
四、久野の「欠視症」
五、言葉に代わる〈音〉
参考文献目録
あとがき