
定価3,300円(本体 3,000円+税)
本書は、ノルウェーにおけるコミュニティ音楽療法の理論と実践を手がかりとして、音楽が社会のなかでどのような意味を持ち得るのかを検討。
特定の理論や実践のみを紹介するものではなく、理論的背景、具体的な実践事例、それを支える制度的環境、さらに日本における実践研究という複数の視点を往還しながら、音楽を通した社会的実践の可能性を考察する。
【編著者プロフィール】
杉田 政夫(すぎた まさお)
(執筆担当:序章、第2〜8章、第9章第1〜5節第1項第6節、第10章、第12章、終章)
広島大学大学院教育学研究科博士課程後期修了、博士(教育学)。福島大学人間発達文化学類教授。
阿高 あや(あたか あや)
(執筆担当:第1章、第2〜4部の導入および総合考察、間奏の導入、第11章)
日本協同組合連携機構主任研究員、立教大学コミュニティ福祉学部兼任講師、東京大学大学院情報学環客員研究員。福島大学大学院人間発達文化研究科地域文化創造専攻修了、修士(地域文化)。東京大学大学院学際情報学府社会情報学コース修士課程修了、修士(社会情報学)。
【著者プロフィール】
伊藤 孝子(いとう たかこ)
(執筆担当:間奏第2〜3節、第9章第5節第2項、コラム⑥)
広島大学大学院教育学研究科修了、同大学院生物圏科学研究科博士課程後期退学。名古屋芸術大学芸術学部音楽ケアデザインコース教授。同大学音楽総合研究所音楽療法部門(実践グループ “マイエ”)主任。
青木 真理(あおき まり)
(執筆担当:間奏第1節)
京都大学大学院教育学研究科博士課程後期単位取得、教育学修士。福島大学人間発達文化学類附属学校臨床支援センター教授。
目次を表示
序文 共創の生態系へ向けて(ブリュンユルフ・スティーゲ)
推薦の辞(トム・ネス╱ヴィーゴ・クリューガー)
序章 コミュニティ音楽療法と社会変革のミュージッキング
Ⅰ 本書の背景――現代社会と音楽の位置
Ⅱ 研究の出発点――出会いと問題意識
Ⅲ 本書のねがい――社会変革のミュージッキング
Ⅳ 本書の特質――理論・実践・制度・展開の構成原理
第一部 概要と理論
第一章 コミュニティ音楽療法の背景――実践が生まれる社会的・歴史的地層
第一節 ノルウェー社会の基層――自然・地理・人口構成の分析
第二節 福祉国家ノルウェーの社会構造――平等と包摂を支える思想的基盤
第三節 社会変動と課題の顕在化――精神的健康・移民・孤立・排除の構造
第四節 社会民主主義・人権・文化政策の前史――コミュニティ音楽療法成立の歴史的条件
第五節 施設中心モデルからコミュニティ志向へ――グロッペン・プロジェクトという萌芽
第六節 文化中心音楽療法の理論化と国際的展開――「第五の勢力」としての位置づけ
〔コラム①〕グリーグ効果――音楽の「効果」を文脈から考える
第二章 コミュニティ音楽療法の基礎的概念
第一節 コミュニティ音楽療法の定義をめぐる困難性
第二節 PREPAREモデルによる理論的応答
第三節 PREPAREによる実践理解の枠組み――七つの特性と理論的射程
第四節 「検討装置」としての理論的枠組み
〔コラム②〕コミュニティ音楽療法と人権をめぐる実践条件
第三章 芸術的市民権と相互音楽的ケア
第一節 芸術的市民権という問題設定
第二節 「プラクティス・ターン」という実践理解
第三節 相互音楽的ケアと社会正義
〔コラム③〕音楽実践と人権──芸術的市民権をめぐる外枠的視座
第二部 実践
導入――社会のなかを移動する人とコミュニティ音楽療法
第四章 日常社会における参加と関係形成――市民として生きる場
第一節 U82コミュニティ・センター――開かれた文化空間における日常的参加
第二節 FANA文化センター――青少年支援と社会参加への接続
第三節 考察――文化施設に現れるコミュニティ音楽療法の実践的位相
第五章 支援とケアが必要となる状況――医療とともに生きる場
第一節 オラヴィケン病院――高齢者精神医療におけるコミュニティ音楽療法
第二節 ビオルグヴィン地区精神医療センター(DPS)――リカバリー志向医療とコミュニティ接続
第三節 考察――医療環境に現れるコミュニティ音楽療法の実践的位相
第六章 司法制度下の関係形成――ビオルグヴィン刑務所における実践
第一節 開放型刑務所という制度環境
第二節 刑務所内部における音楽実践の構造
第三節 考察――司法制度下に現れるコミュニティ音楽療法の実践的位相
第七章 出所後の社会再接続――USF文化センターの実践
第一節 出所後支援としての制度的・実践的コンテクスト
第二節 USF文化センターにおける音楽実践の構造
第三節 考察――出所後の移行過程に現れるコミュニティ音楽療法の実践的位相
総合考察――制度環境を横断するコミュニティ音楽療法の生態学的構造
間奏 トム・ネスの実践――創造的音楽療法とコミュニティへの関与
第一節 個人の回復を支える創造的音楽療法――妄想型統合失調症女性シルヴィアの事例
第二節 家族とともに編まれる音楽実践――半公共的空間におけるテレッサのケース
第三節 集団創造としてのラグナロックと地域への開放
第三部 制度的展開
導入――コミュニティ音楽療法を支える制度的基盤
第八章 音楽療法士の養成――ベルゲン大学とノルウェー国立音楽大学における専門職形成
第一節 ベルゲン大学の音楽療法士養成課程
第二節 ノルウェー国立音楽大学の音楽療法士養成課程
第三節 両大学の音楽療法士養成課程の比較
第四節 考察――専門職形成にみる制度的特徴
〔コラム④〕音楽療法を音楽学に書き込むということ――ルードの四〇年をめぐって
第九章 POLYFON知識クラスター――音楽療法の制度的基盤
第一節 POLYFONの成立条件――政策背景と制度的要請
第二節 POLYFONの制度構造――知識クラスターというモデル
第三節 制度化を支える研究基盤――知識生産と知識循環
第四節 制度展開のプロセス――医療・福祉・地域への拡張
第五節 制度ネットワークと実践拠点――地域における具体化
第六節 考察――音楽療法制度化の知識ネットワーク
〔コラム⑤〕四〇年という時間で考える――POLYFONの未来をめぐって
〔コラム⑥〕ソウルパーティ・アフタートーク――フランシス、その後
第十章 STALWARTSプロジェクト――学校制度におけるコミュニティ音楽療法
第一節 学校領域におけるコミュニティ音楽療法の課題
第二節 コミュニティ音楽療法と学校制度
第三節 STALWARTSプロジェクトの制度的・教育的基盤
第四節 学校におけるコミュニティ音楽療法の導入条件――インタビューにもとづく分析
第五節 考察――学校におけるコミュニティ音楽療法導入の条件とその射程
総合考察――コミュニティ音楽療法制度形成の三層構造
第四部 日本での展開
導入――理論と実践の往還としての実践研究
第十一章 仮設環境における教育と芸術的市民権――原子力災害と子どものミュージッキング
第一節 避難と仮設環境――教育の断絶と再編の課題
第二節 理論的枠組み――災害教育研究と芸術的市民権
第三節 研究デザイン
第四節 音楽実践の展開――仮設教育環境における関係形成
第五節 園長インタビューの分析にみる関係・権利・倫理的次元
第六節 考察――ミュージッキングと芸術的市民権の再生
第七節 総括と今後の課題
第十二章 相互音楽的ケアと社会正義のあわいで――コミュニティ音楽療法における一場面の逐語・逐動的記述から
第一節 背景と問題意識――実践の記述というアポリア
第二節 理論と実践の懸隔
第三節 実践を記述するための理論的視座――省察研究とコミュニティ音楽療法
第四節 音楽実践をどのように記述するか
第五節 事例分析――音楽的相互作用のミクロ記述
第六節 考察――音楽実践における省察と関係生成
総合考察 実践記述としての研究の可能性――日本における研究の蓄積と国際的対話
終章――社会正義に向けた社会変革としてのミュージッキング
第一節 「ミュージッキングを通じた社会変革」の意味
第二節 音楽の価値を「関係の生成」から捉え直す
第三節 日本への示唆――文化・制度・理論の翻訳
第四節 本書の限界と今後の課題
謝辞

