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谷崎潤一郎の言語ゲーム

『卍(まんじ)』と『痴人の愛』の表現行為論

定価: 3,850 (本体 3,500 円+税)

多様で精彩に富んだ会話の談話分析からその独自な表現機能がどのような話法上の手法によるか解明。現代日本語の表現力の可能性を追究する上で重要な論点を提供。

【著者略歴】
大野 晃彦(おおの あきひこ)
慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学
1972-76年 フランス政府給費留学生としてパリ第七大学・
     パリ第八大学言語学科博士課程留学
1977年 横浜市立大学文理学部(仏文専攻)に着任
1981年 小場瀬研究奨励賞(日本フランス語フランス文学会)受賞
1981-82年 ハーバード大学言語学会客員研究員
現在 横浜市立大学名誉教授
   慶応義塾大学言語文化研究所兼任所員
専攻:言語表現行為論
著書:『夏目漱石と鈴木大拙―テクスト行為論的考察―』(駿河台出版社、2013年)
目次を表示します。
まえがき

第一部 『痴人の愛』の言語ゲーム
 序―分析の視点

第一章 譲治の仕掛けた言語ゲームとその誤算
 はじめに―譲治のナレーションと自由直接話法(最初の言語ゲーム)
 第一節 第二の言語ゲームから友達のような夫婦へ
 第二節 ナレーションと告白の裏面
 第三節 モラリスト的マゾヒストの言説
 第四節 譲治の誤算とナオミの「嘘」の行方

第二章 ナオミのサディスティックな悪徳言語ゲーム
 はじめに―密室の内から外へ
 第一節 ダンスレッスン初日のナオミと譲治
 第二節 カフエエ エルドラドオでの譲治・熊谷との言語ゲーム
 第三節 嵐の夜の企みとフィクショナルな四人ゲーム
 第四節 ナオミと仲間の言語ゲームとその舞台裏
 第五節 夏の鎌倉の悪徳パフォーマンス

第三章 言語ゲームの袋小路とゲームの崩壊
 はじめに―言葉の崩壊から言葉なき暗闘へ
 第一節 譲治と浜田の奇妙な言語ゲーム
 第二節 譲治の詫びの強要とナオミの無言の対決
 第三節 譲治の聖地神話
 第四節 言語ゲームの崩壊と夜の暗闘
 第五節 クラッシュ

第四章 究極の言語ゲームと最後に微笑む者
 はじめに―破局直後とその後の譲治
 第一節 ナオミの逆転ゲームの企み
 第二節 マゾヒズムとサディズムの行方
 第三節 最後の攻撃
 第四節 フィクショナルな女と芸術の勝利

第二部 『卍(まんじ)』の言語ゲーム
 序―『痴人の愛』から『卍(まんじ)』の時空へ

第五章 『卍(まんじ)』における語り手の言説と自由間接話法
 はじめに―語り手とテクスト内の「作者」
 第一節 語り手柿内園子の役割と仕掛けられた罠
 第二節 園子の語りの変容と自由間接話法―笠屋町着物盗難事件
 第三節 園子のナレーションと綿貫の言説―自由間接話法の表現機能
 第四節 自由間接話法の表現行為論的意味と『卍』のテクスチャー

第六章 ヒロイン光子の告白と自由間接/直接話法
 はじめに―綿貫の言説から光子の言説へ
 第一節 綿貫の秘密についての光子の言説と園子のナレーション
 第二節 綿貫の居直りの言説と語り手園子
 第三節 園子の語りの転換と三層の時間構造
 第四節 笠屋町着物盗難事件の真相
 第五節 光子・綿貫の最後の口論と『卍』のロジック

あとがき
著者大野晃彦 著
発行年月日2021年04月30日
頁数316頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-2379-7