博士論文・心理学・教育学など書籍・学術出版社|(株)風間書房

ボルノー教育学入門

教育実践に役立つボルノー先生の教え

定価: 1,980 (本体 1,800 円+税)
教員に求められる教育的愛情とは。没後20年を過ぎても輝きを増すボルノーの教育思想をわかりやすく解説。現代日本の教育的諸課題にも対応するボルノー理論の入門書。

【著者略歴】
広岡義之(ひろおか よしゆき)
1958年生まれ
関西学院大学大学院文学研究科博士課程(教育学専攻)単位取得満期退学
現在 兵庫大学健康科学部教授 博士(教育学)
専攻 教育学(教育哲学・教育思想史)
目次を表示します。
まえがき
第一章 教育の目的と目標
 個人主義的な教育の定義
 集団主義的な教育の定義
 個人の教育と集団の教育の二つの教育の解釈
 「教育」の必要性と可能性について
 「教育の段階的区分」について
第二章 教育における「信頼」について
 教員に求められる教育的愛情
 教員に求められる使命感や責任感について
 「包括的信頼」という概念について
 ボルノー先生の「ユーモア」論
 教師と生徒の間で醸し出される「雰囲気」が快活で晴れやかであることの重要性
 教師の職業病である「教師の性格の暗さ」について
 朝のような晴れ晴れとした感情
 信頼には、常に冒険・賭けが伴う
 「信頼」によって人間は良い方向へ作り変えられる
 ボルノー先生の「教育愛」とシュタイナーの「畏敬の念」の共通点
第三章 幼児期の教育について
 幼児の健全な発達にとってどうしても必要不可欠な「家という保育室」
 親と幼児の交わりから醸し出される「信頼の最初の芽」(ペスタロッチ)について
 フレーベルの主張する幼児教育の重要性について強調するボルノー先生
第四章 ボルノー先生と林竹二の「実存的授業論」
 ボルノー先生における「我と汝」「実存」「主体性」「出会い」の実存哲学的概念
 「適応教育」から「自立への教育」「主体性への教育」へ
 ボルノー先生と林竹二に実存的教育思想の共通点
 林竹二の「深さのある授業」とブーバーの〈我―汝〉論の関連性
 「授業」とは「カタルシス(浄化)作用」に他ならない(林竹二)
第五章 「道徳教育」について
 ボルノー先生における徳論(価値項目)の学問的背景
 中学校「道徳の内容項目」の「自律」とボルノー先生の徳論の理解
 「感謝」という道徳の内容項目をボルノー先生の徳論から読み解く
 ニコライ・ハルトマンの「信念」について
 ボルノー先生における道徳的な「謙虚」という在り方
 ボルノー先生における「畏敬」概念
第六章 言語と教育について
 「人間はその言語を通して、そのようなものになる」(ボルノー)
 ボルノー先生の言語教育論と灰谷健次郎の教師論の共通点
 言葉そのものが一つの現実形成力をもっている
 人間は言葉を媒介にしてのみ「道徳的存在」となりえる
 ボルノー先生における教育的な「対話」の意義
第七章 連続的形式の教育と非連続的形式の教育について
 『実存哲学と教育学』の教育的特徴について
 日々の生活の中での「非連続的局面」とは?
 道徳的危機に直面したときに、教師や親はどのように対応すればいいのか?
 教師にとって、子どもの危機的状況をどのように受け止めればいいのか?
 「危機」を突破することによって、初めて新しい生活秩序が生じてくる
 「教育はつねに覚醒である。」(シュプランガー)
 非連続的形式の教育の具体例としての実存的な「出会い」
 「出会い」の本質は、「我」と「汝」とが互いに開けた心で直接的な関係を結ぶ出来事である
 「訓戒」や「訴え」とは、「人間を惰性の状態から引き戻そうとする努力」を要する瞬間である
第八章 家庭教育の重要性について
 「故郷喪失者」としての現代人
 「私的領域の喪失」の現代にあって、子どもに「安らぎ」を与えることの重要性について
 ボルノー先生における「父親」の家庭での子どもへの関わり方について
 子どもの体験する「信頼の崩壊」を乗り越えるように導くこともまた大人の役割である
 家庭教育での親と幼児の信頼関係の確立は、すべての人間に関わる教育の根本課題となる
 家庭教育の最も重要な役割の一つは、子どもに被包感の領域を確保してやること
 家庭教育における独自の「父親の役割」
第九章 平和教育について
 「平和」が人間の陶冶・形成に関する学問となるべきである
 平和の評価と、その実現のために身を没入する意志を、若い人間の心に植え込むことの重要性
 平和教育論の六つの土台
第一〇章 高齢者教育について
 高齢者を助け、有意義に彼らの余生を全うするように仕向けることの重要性
 老年のあるべきその固有の本質を認識することの重要性
 ボルノー先生が取り上げる「若返り」概念とは?
第一一章 環境教育について
 「環境倫理」の視点は、ボルノー先生の実存主義克服の「新しい庇護性」概念と深く関連する
 ユクスキュルの「環境論」とボルノー先生の「直観」理解
第一二章 生命尊重について
 限界状況の究極の姿が人間の「死」である
 人間の生死について子どもたちに考えさせることは極めて大切な教育的課題である
 「愛する者の死に際して自らの世界の居住性は崩壊する。」(ミンコフスキー)
第一三章 「練習」をするということの教育的意義について
 本来の「練習」の積極的で正しい教育的意義とは?
 「退屈であることは、授業の最もひどい罪である。」(ヘルバルト)
 「〈練習〉の本質は、人間の内面的な態度が変化することである。」(シュプランガー)
 オイゲン・ヘリゲルの『弓と禅』における「練習」の教育的意義
 「放下(沈着)」という禅の悟りのような状態で「練習」に向かいあうことの大切さ
 「練習」の精神とは、「正しい生活への道」である
 私たち人間は「実存」を迎えるまでは忍耐強く「練習」しなければならない
 ボルノー先生におけるモンテッソーリの「練習」概念の評価
 「練習」を通じて得られる子どもの根本的な変化の重要性を指摘するモンテッソーリ
参考文献
著者広岡義之 著
発行年月日2012年04月15日
頁数162頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-1925-7