博士論文・心理学・教育学など書籍・学術出版社|(株)風間書房

山口仲美著作集 5オノマトペの歴史 1

その種々相と史的推移・「おべんちゃら」などの語史

定価: 6,380 (本体 5,800 円+税)

 著作集5・6『オノマトペの歴史』二巻は、オノマトペ(=擬音語・擬態語)のさまざまな性質や史的推移を明らかにした論文やエッセイを収録。第五巻はⅠⅡⅢの三部から成る。
 Ⅰ部は、「オノマトペの種々相」。『源氏物語』や『今昔物語集』、狂言やコミックなど作品別・ジャンル別にとらえた時に顕著に現われるオノマトペの特色・機能を解明。研究のエキスをぎゅっと詰めこんだ二〇のコラムも、おすすめ。
 Ⅱ部は、「オノマトペの史的推移」。語彙・語音構造・意味・語法などの面からオノマトペの史的推移を追究。男女の泣き方を表すオノマトペ、動物の声を写す擬音語、楽器の音を表す擬音語など、興味津々の史的推移が解き明かされる。
 Ⅲ部は、「『おべんちゃら』などの語史」。「いちゃもん」「おべんちゃら」「どんぶり」「パチンコ」などオノマトペにルーツを持つと思われる言葉を対象に、その語史を追究。びっくりするような言葉のルーツが明らかに。

【著者略歴】
山口仲美(やまぐち なかみ)
1943年静岡県生まれ。お茶の水女子大学卒業。
東京大学大学院修士課程修了。文学博士。
現在―埼玉大学名誉教授。
専門―日本語学( 日本語史・古典の文体・オノマトペの歴史)
著書―『平安文学の文体の研究』( 明治書院、第12回金田一京助博士記念賞)、『平安朝の言葉と文体』(風間書房)、『日本語の歴史』(岩波書店、第55回日本エッセイスト・クラブ賞)、『犬は「びよ」と鳴いていた』(光文社)、『日本語の古典』(岩波書店)など多数。
2008年紫綬褒章、2016年瑞宝中綬章受章。
専門分野関係のテレビ・ラジオ番組にも多数出演。

☆☆☆メディアで紹介されました☆☆☆
2018年11月5日 秋田魁新報に紹介されました。「日本語論、硬軟織り交ぜ 山口仲美著作集発刊」
2018年11月11日 東京新聞に紹介されました。「出版情報」
2018年11月16日 週刊読書人(特集 全集・講座・シリーズ)に先生が執筆されたエッセイが掲載されました。「全集・著作集が役に立つ時 筆者が考える3つのメリット」
2018年12月26日 日本経済新聞(夕刊)にインタビュー記事が掲載されました。「日本語学者・山口仲美の著作集刊行」
2019年1月18日 週刊読書人に『言葉から迫る平安文学3 説話・今昔物語集』が紹介されました。
2019年3月9日 図書新聞(3390号)に『言葉から迫る平安文学1 源氏物語』の書評が掲載されました。
「言語学的な方法に拠る分析の数々 山口仲美の長く充実した研究人生の、豊饒なその成果」評者は浅川哲也先生(首都大学東京教授)です。 
目次を表示します。
著作集の刊行にあたって
まえがき
Ⅰ オノマトペの種々相
 音象徴語研究の必要性
  1 音象徴語の活躍 2 豊かな語彙量 3 卑俗なことば
  4 意味の分かることば 5 方言の音象徴語 6 古語の音象徴語
  7 外国人からみた音象徴語 8 研究の必要性
 古典の擬音語・擬態語―掛詞式の用法を中心に―
  1 はじめに 2 一般的用法 3 葉ずれの音 4 けものの声
  5 虫の声 6 鳥の声 7 語の形態 8 むすび
 擬音語から普通語へ
  1 はじめに 2 直写型 3 掛詞型 4 聞きなし型 
  5 心情推察のことば 6 おわりに
 動物の鳴き声と平安文学 
  1 はじめに 2 平安時代の動物の鳴き声 3 鳴き声のうつし方 
  4 鳴き声と平安文学
 『源氏物語』の象徴詞
  1 はじめに 2 象徴詞をめぐって 3 平安文学作品にみられる象徴詞
  4 源氏物語の象徴詞 5 擬音語と擬態語 6 源氏物語の擬音語の性質 7 平安文学作品の擬音語との比較
  8 源氏物語の擬態語の性質 9 平安文学作品の擬態語との比較 10 おわりに
 『今昔物語集』の象徴詞
  1 はじめに 2 従来説の訂正 3 表記と文体 4 音象徴性の度合い  5 卑俗性
  6 擬音語の性質 7 擬態語の性質 8 語音結合の型の豊富さ 9 語音結合の型の性質 10 動詞型象徴詞について 11 おわりに
 狂言の擬音語
  1 はじめに 2 ニワトリの声―(1)雞聟 (2)地鳴きの声 (3)時をつくる声―
  3 フクロウの声―(1)梟山伏 (2)狂言にみるフクロウの声の性質―
  4 トビの声―(1)柿山伏 (2)狂言にみるトビの声―
  5 他のジャンルの鳥声 6 おわりに
 オノマトペと文学
  1 はじめに 2 斬新さを付与する 3 感覚刺激を付与する 4 リズム感を与える 5 重層効果を付与する 6 機知を与える
 コミック世界の擬音語・擬態語
  1 はじめに 2 ストーリーを展開させる 3 滑稽感・迫力のある語を造る
  4 普通の語からたやすく造る 5 心理に転用する 6 文字の工夫で臨場効果を倍増する 7 時間の流れを造り出す 8 スローモーションビデオ効果を出す 9 掛詞機能を発揮させる 10 リズム機能は、かなわない 11 おわりに
 擬音語・擬態語 二〇のコラム
  1 オランダ鶯は何と鳴く?―落とし語と擬音語―
  2 音は社会を映し出す―擬音語が語るもの―
  3 もとは擬音語!―名前のルーツ―
  4 国によって異なるのは、なぜ?―世界の擬音語―
  5 猿は「ココ」と鳴いていた―擬音語と文化史―
  6 擬音語好きの一茶さん―俳句と擬音語―
  7 発音が意味を表す―擬音語・擬態語の特色―
  8 鳴き声が言葉に聞こえる―「聞きなし」と擬音語―
  9 時代の価値観を表す―擬態語が語るもの―
  10 一千年も生き延びる―擬音語・擬態語の寿命―
  11 伝統が残っている―方言と擬音語・擬態語―
  12 掛詞の技法―和歌と擬音語―
  13 擬態語で人物造型―物語と擬態語―
  14 口で唱える効果音―狂言と擬音語・擬態語―
  15 オノマトペの創造―詩と擬音語・擬態語―
  16 チントンシャン―楽器の音色―
  17 幸田文さんの文章―小説と擬音語・擬態語―
  18 天狗が鳴いた―意表をつく擬音語―
  19 視覚効果を生かしきる―コミックと擬音語・擬態語―
  20 擬音語・擬態語の型―語型とその変遷―
Ⅱ オノマトペの史的推移
 動物の声を写す擬音語の史的推移
  1 はじめに 2 「写実的な擬音語」と「聞きなし的な擬音語」 3 具体的な用例は 4 聞きなし的な擬音語-奈良時代― 5 聞きなしは和歌で愛用―平安時代― 6 聞きなしに不安感が漂う
  7 写実的な擬音語の隆盛―鎌倉・室町時代― 8 再び聞きなしの隆盛―江戸時代― 9 笑いを誘いだす聞きなし 10 再び写実的な擬音語の繁栄―近代― 11 独創性をもとめて 12 まとめ
 楽器の音を写す擬音語(1)―古代・中世―
  1 はじめに 2 現代の楽器の音を写す擬音語 3 江戸時代以前の楽器の音の出現率 4 奈良時代の楽器の音 5 平安時代には楽器の音が出現しない 6 楽器の演奏は、比喩と形容句で 
  7 鎌倉時代にも楽器の音が出現しない 8 室町時代の狂言歌謡に囃子楽器の音―(1)楽譜は、擬音語由来の言葉
  (2)小鼓・太鼓・笛の音は楽譜でもあり擬音語でもある (3)鉦の音と大鼓(おおかわ)の音は、擬音語―
  9 「くゎんこくゎんこくゎんこや」とは 10 「ちやうんうちやうんう」とは 11 狂言に集中的に出現する
  12 「はっぽい」とは 13 「とらろ」を、尺八の音とみせかけたか 14 室町時代の楽器の音
 楽器の音を写す擬音語(2)―近世・近現代―
  1 はじめに 2 江戸時代は、楽器の音があふれている 3 『松の葉』に頻出する太鼓の音
  4 歌舞伎では、大太鼓の音が演出用語 5 滑稽本・草双紙・川柳にも太鼓の音 6 三味線音が鳴り響く
  7 口三味線も、さかん 8 太鼓と笛の組み合わせ 9 さまざまな楽器の音 10 楽器の音が掛詞になる
  11 楽器の音が、話のオチになる 12 楽器の大衆化 13 楽器の音を写せる「唱歌」
  14 楽器の音に囲まれた生活 15 近現代の楽器の音 16 おわりに
 男女の泣き方の推移―オノマトペからとらえる―
  1 はじめに 2 近代では、女は人前で声をあげて泣いても良い 3 男は、声をあげて泣いてはならぬ
  4 江戸時代では、男も声をあげて泣く 5 女も声をあげて泣く 6 男と女が、声をあげ「わっ」と泣きあう
  7 室町時代の男や女は、声を立てて泣かない 8 鎌倉時代では、男性は「はらはら」と落涙する
  9 女性は、「さめざめ」と泣く 10 平安時代は、男性が人前で声をあげて泣いた 
  11 天皇や道長まで、声をあげて泣いた 12 女性が泣くのは、はしたない 13 他の作品では、女性はどうふるまっているか
  14 奈良時代は、平安時代とほぼ同じ 15 おわりに
 オノマトペの文法的機能の変遷
  1 本稿の目的 2 「ちかっと光る」―「と」をとる― 3 「ちびちびなめる」―「と」をとらない―
  4 「かんかんに凍る」―「に」をとる 5 現代語では、オノマトペ以外の情態副詞は「に」をとる
  6 奈良時代の「と」をとる擬音語 7 「と」をとる擬態語 8 結果を表す「に」付きオノマトペ
  9 過程を表す「に」付きオノマトペ 10 音象徴の効果の違い 11 述語性をもつオノマトペ
  12 奈良時代のオノマトペの特色 13 平安時代以降のオノマトペ
 奈良時代の擬音語・擬態語
  1 はじめに 2 対象とする擬音語・擬態語 3 どんな擬音語・擬態語が見られるのか 4 万葉集に最も多く残存
  5 平安時代の擬音語・擬態語 6 平安時代までは残った語 7 現代まで生き延びた語 
  8 奈良時代特有の擬音語・擬態語の特色―(1)野外の動物の声や音そして様子 (2)ダイナミックな生活音や様子
  (3)鈴や玉などの鳴る音― 9 おわりに
 平安時代の象徴詞―性格とその変遷過程
  1 はじめに 2 象徴詞の弁別基準 3 象徴詞と一般語彙との連続性 4 平安時代の象徴詞の性格
  5 奈良時代の象徴詞と比較して 6 奈良時代から平安時代へ 7 おわりに
 中古象徴詞の語音構造(1)―清濁に問題のある語例を中心に―
  1 はじめに 2 問題点の整理 3 問題解決の方法 4 中古象徴詞の抽出 5 清濁に問題のある語例
  6 「ABABと」型の象徴詞を例にとって 7 A音節・B音節ともに清濁不明な場合―(1)語音構造の変遷過程
  (2)語誌― 8 B音節の清濁不明な場合 9 A音節の清濁不明な場合 10 中古象徴詞の語音構造の特質
  11 おわりに
 中古象徴詞の語音構造(2)―撥音・長音・促音に関する問題をふくむ語例を中心に―
  1 はじめに 2 撥音に関する問題をふくむ象徴詞―(1)無表記 (2)「う」表記 (3)「い」表記 (4)まとめ― 3 長音に関する問題をふくむ象徴詞 4 促音に関する問題をふくむ象徴詞 5 おわりに
 浄瑠璃詞章の象徴詞―その変容―
  1 はじめに 2 象徴詞の量 3 象徴詞の類型化 4 象徴詞の固定化 5 象徴詞の長大化
  6 新しい象徴詞の導入 7 おわりに
 オノマトペ研究の私的回顧
  1 四三年前の国語学会で 2 優れた論文に啓発される 3 ちんちん千鳥のなく声は 4 犬は「ぴよ」と鳴いていた
  5 擬音語・擬態語辞典 6 語源の追究に応用
Ⅲ 「おべんちゃら」などの語史
 いちゃもん
  1 辞書に出ていなかった! 2 「いちゃいちゃ」との関係は? 3 戦後生まれの「いちゃもん」
 おじや
  1 「おじや」と「ぞうすい」 2 女房詞が、一般に普及 3 「おじや」の「じや」って、何?
 おべんちゃら
  1 「べんちゃら」として登場 2 関西では、サービス精神から出る「褒め言葉」 3 関東では、マイナスイメージの語に
 がさつ
  1 「がさつ」の語源は? 2 「がさつ」は、戦国時代から 3 戦国時代の「がさつ」「がさつ者」とは?
 ぐる
  1 「ぐる」は、警察用語 2 「ぐる」は、三百年前に誕生 3 「ぐる」は、「ぐるり」からか
 くるま 
  1 「くるま」という言葉は、古くから 2 「くるま」の語源は? 3 牛車・人力車が、「くるま」
 ざっくばらん
  1 『或る女』の「ざっくばらん」 2 男性が、好む言葉 3 なぜ、男性が愛用するのか?
 じゃじゃ馬
  1 男性が、「じゃじゃ馬」! 2 現代では、気性の荒い女性 3 「じゃじゃ」って、何? 4 「じゃじゃ馬」の調教法
 しゃぶしゃぶ
  1 洗濯のことを、「しゃぶしゃぶ」 2 「しゃぶしゃぶ」と「さぶさぶ」「ざぶざぶ」「じゃぶじゃぶ」  3 水音に欠かせない「ぶ」の音 
 総すかん
  1 語源を考える 2 関西出身の言葉 3 内田魯庵は、俗語好き
 たんぽぽ
  1 「たんぽぽ」は、室町時代から 2 鼓の音は、「たんぽぽ」 3 たんぽぽ遊び
 てんてこ舞い
  1 「てんてん舞い」と「てんてこ舞い」 2 「てんてん」も「てんてこ」も、締太鼓の音 3 「てんてこ舞い」は、なぜ勝ったのか?
 とことん
  1 「徹底的に」の意味は、新しい 2 足拍子と囃子言葉の「とことん」 3 「とことんやれ節」が、仲立ちに
 とろろ汁 
  1 「とろろ芋」は、存在しなかった 2 「とろろ」は「とろとろ」から 3 「とろろ汁」は、室町時代から 4 名物「とろろ汁」の出現
 トンカチ
  1 一九四一年に、例があった 2 トンカチのことを、何と呼んでいたか? 3 トンカチの醸す意味合い
 とんとん拍子 
  1 さても手拍子、とんとん拍子
  2 「とんとん拍子」と「順風満帆」 3 「とんとん拍子」には、ツキの要素が
 どんぶり
  1 「どんぶり」は、江戸時代から 2 「どんぶり」は、慳貧ぶりの鉢? 3 「どんぶり」は、もともと擬音語
 ハタハタ
  1 ハタハタという名は、江戸時代から 2 ハタハタは、水戸でも獲れた? 3 ハタハタは、雷の音
 パチンコ 
  1 終戦直後のパチンコ屋 2 パチンコという言葉は、いつ出現したか? 3 「パチパチ」と「ガチャンコ」 4 もう一つの「パチンコ」
 ばった屋
  1 「ばった」屋は、江戸時代から 2 「ばったり」から生まれた 3 「安値で」の意味を持つ「ばったり」
 ひいらぎ
  1 昔は「ひひらき」 2 「ひひ」は、ぴりぴりの意味 3 「ら」は接辞、「き」は「木」
 ブランコ
  1 「ブランコ」は、外来語? 2 古くは、「ゆさはり」「ゆさばり」 3 「ぶらここ」「ぶらこ」の登場
  4 「ぶらんこ」に登場
 へなちょこ
  1 明治三二年が、最も古い例か? 2 明治一三年に作った言葉だった! 3 「へなちょこ」お猪口の再現
 ぺんぺん草 
  1 ぺんぺん草とナズナ 2 名前の由来は? 3 江戸方言だった!

既発表論文・著書との関係
著者山口仲美 著
発行年月日2019年10月31日
頁数722頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-2294-3

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