博士論文・心理学・教育学など書籍・学術出版社|(株)風間書房

「書く」ための文法指導に関する研究

形式名詞「こと」の取り扱いの観点から

定価: 7,150 (本体 6,500 円+税)

形式名詞「こと」を一つの足掛かりとして、「書く」ための文法指導を論じた。さらに国語科教育と他領域、日本語教育との連携の可能性についても言及した画期的研究。


【著者略歴】
河野 亜希子(こうの あきこ)
1975年 鹿児島県生まれ
1994年 鹿児島県立鹿児島中央高等学校卒業
1998年 福岡女学院大学人文学部日本文化学科卒業
2014年 九州大学大学院比較社会文化学府日本社会文化専攻(日本語教育講座)修了
2017年 九州大学大学院地球社会統合科学府博士後期課程修了

博士(学術)。福岡大学附属大濠中学校・高等学校、中央高等学院福岡校、福岡翔学館高等学院、早稲田大学系属早稲田佐賀中学校・高等学校、上智福岡中学高等学校、筑紫女学園中学・高等学校の国語科教員(1998年~2018年)を経て、2019年より現職(福岡工業大学国際連携室日本語講師)。
目次を表示します。
本書における表記方法
序章 はじめに
 0.研究の概要
 1.研究の背景
 2.研究の視点
 3.研究の目的
 4.用語の定義
 5.本書の構成

第1章 文法教育の変遷と先行研究概観及び研究課題
 1.文法教育の変遷
  1.1.国語科教育の変遷と現状
   1.1.1.明治期から大正期
   1.1.2.昭和戦前期
   1.1.3.昭和戦後期
   1.1.4.平成から現在
  1.2.文法教育の変遷と現状及びその位置づけ
   1.2.1.明治期から大正期
   1.2.2.昭和戦前期
   1.2.3.昭和戦後期
   1.2.4.平成から現在
  1.3.小括
 2.先行研究概観
  2.1.多言語・多文化下での国語科教育に関する研究
  2.2.学校文法の問題を取り上げた研究
  2.3.文法と作文・表現指導に関する研究
  2.4.個別の表現に焦点をあてた研究
  2.5.形式名詞「こと」の習得に関する研究
  2.6.小括
 3.学校教育の変遷及び先行研究から示唆されること
 4.研究課題及び研究方法

第2章 文法に対する意識調査及び教科書・コーパスにおける調査結果
 1.意識調査の概略と目的
  1.1.調査対象者
  1.2.データ収集方法
  1.3.調査項目
  1.4.調査結果
   1.4.1.生徒の文法学習に関する意識
   1.4.2.教員の文法指導に関する意識
 2.教科書分析の概略と目的
  2.1.対象教科書等
  2.2.調査項目
  2.3.教科書分析の結果
 3.コーパス分析の概略と目的
  3.1.対象コーパス
  3.2.調査項目及び調査方法
  3.3.コーパス分析の結果
 4.文法学習・指導に関する意識と教科書提示等との相関性について

第3章 形式名詞「こと」の分類法と問題点
 1.形式名詞「こと」の類型とその特徴
  1.1.辞書による分類
  1.2.先行研究による分類
  1.3.形式名詞「こと」の類型の特徴と学習・指導上の問題点
 2.「文の成分」における形式名詞「こと」を含む文の類型
  2.1.学校文法における「文の成分」
  2.2.「文の成分」から見た「こと」を含む文の類型
  2.3.「文の成分」に基づく「こと」を含む文の類型の観点から見た問題点
 3.述部「「こと」+「だ」」を引き起こす文の類型とその特徴
  3.1.述部「「こと」+「だ」」の用例
  3.2.述部「「こと」+「だ」」を引き起こす文の類型及び主部の分類
   3.2.1.「属性叙述文」と「事象叙述文」
   3.2.2.述部「「こと」+「だ」」を引き起こす文
  3.3.述部「「こと」+「だ」」を引き起こす主部の特徴と意味
  3.4.述部「「こと」+「だ」」を引き起こす文と学校文法との関係
 4.形式名詞「こと」の一般的な分析における問題点

第4章 作文調査による形式名詞「こと」の用法分析
 1.作文調査の概略と目的
  1.1.補充作文による調査
   1.1.1.調査対象者
   1.1.2.データ収集方法
   1.1.3.調査項目
  1.2.課題作文による調査
   1.2.1.調査対象者
   1.2.2.データ収集方法
   1.2.3.調査項目
 2.形式名詞「こと」の使用実態
  2.1.補充作文における回答結果
   2.1.1.主に文中に表れ、用言が名詞化された表現
   2.1.2.用言が名詞化され文末形式も固定化された表現
   2.1.3.小括
  2.2.課題作文における回答結果
   2.2.1.正用表現
   2.2.2.誤用表現
   2.2.3.容認度が異なる表現
   2.2.4.小括
  2.3.補充作文及び課題作文から示唆されること
 3.課題作文における形式名詞「こと」の用法の分析
  3.1.誤用分析
   3.1.1.主述の不一致による誤用
   3.1.2.「こと」「もの」「の」の混同による誤用
   3.1.3.小括
  3.2.容認度が異なる文の分析
   3.2.1.「こと」のない文
   3.2.2.「こと」と「ところ」を同義と捉える文
    3.2.2.1.「ところ」について
    3.2.2.2.「「こと」+「だ」」と「「ところ」+「だ」」の共通点と相違点
    3.2.2.3.「「こと」+「だ」」と「「ところ」+「だ」」文の特徴と問題点
   3.2.3.小括
  3.3.形式名詞「こと」の使用分析から示唆されること

第5章 学校文法における形式名詞の取り扱いの再検討
 1.教科書提示の実態から
  1.1.形式名詞そのものの定義についての観点から
  1.2.言葉の単位と「文の成分」及び品詞の観点から
  1.3.形式名詞の教科書提示における問題点
 2.文脈・場面等による容認度の違いから
 3.形式名詞の位置づけ及びその取り扱いの妥当性

第6章 形式名詞の効果的な指導法
 1.形式名詞の指導において付加すべき観点
  1.1.誤用分析より
  1.2.使用傾向及び容認度が異なる文の分析より
 2.具体的指導法の一案
  2.1.指導手順
  2.2.指導手順に関する留意事項
 3.形式名詞の効果的な指導から示唆される学校文法の可能性

第7章 学校文法に求められる視点とその可能性
 1.学校文法に求められる視点
 2.学校文法の可能性
  2.1.国語科教育における作文・論文指導との連携
  2.2.中等教育と高等教育の連携
 3.「書く」ための学校文法となるために

補章 国語科教育から日本語教育へ
 1.日本語学習者の文体に関する一つの特徴
  1.1.調査の概略と目的
   1.1.1.調査対象者
   1.1.2.データ収集方法
  1.2.データの分類
 2.データ収集結果及び分析
  2.1.日本語学習者及び日本語母語話者の文体的特徴
   2.1.1.日本語学習者及び日本語母語話者の文体の比較①
   2.1.2.日本語学習者及び日本語母語話者の文体の比較②
  2.2.日本語学習者の文体的特徴を引き起こす背景について
  2.3.日本語学習者及び日本語母語話者の文体的特徴から示唆されること
 3.国語科教育と日本語教育の連携の可能性

終章 おわりに
 1.本研究のまとめ
 2.本研究の成果及び意義
 3.今後の課題と展望

文献目録
付録資料
あとがき
索引
著者河野亜希子 著
発行年月日2021年10月31日
頁数250頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-2403-9