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日本学術振興会の設立に関する研究

櫻井錠二のめざした学術研究体制

定価: 11,000 (本体 10,000 円+税)

学術研究を資金面で支える日本学術振興会はどの様に成立したのか。一次資料を駆使して明治期以降における組織の源流に迫り、世界からの影響と黎明期の様相に迫る。


【著者略歴】
山中 千尋(やまなか ちひろ)
1983年 埼玉県生まれ
2007年 神戸大学大学院総合人間科学研究科博士前期課程修了
2013年 神戸大学大学院人間発達環境学研究科博士後期課程単位取得退学
独立行政法人日本学術振興会、慶應義塾大学、一橋大学を経て、2019年から横浜国立大学講師。博士(学術)。 
目次を表示します。
序章 日本学術振興会の設立をめぐる問題の所在
 第1節 問題の所在と研究の目的
  1-1. 学術研究を取り巻く状況
  1-2. 本研究の問いと目的
  1-3. 研究の方法と分析の視点
  1-4. 概念の整理
  1-5. 明治初年における学術関連用語の翻訳
 第2節 先行研究の検討
  2-1. 科学史関連
  2-2. 教育史関連
  2-3. 人物史としての櫻井錠二関連
  2-4. 本研究の位置づけ
 第3節 本書の構成と依拠する諸資料
  3-1. 本書の構成
  3-2. 依拠する諸資料

第1章 国内における研究環境の整備
 第1節 帝国大学の設置と試験研究所の整備
  1-1. 帝国大学の設置と教育・研究
  1-2. 大学の研究環境の形成と地方への拡大
  1-3. 研究機能強化への転換
  1-4. 帝国大学の財政
 第2節 帝国学士院の設置と学術奨励
  2-1. アカデミーの設置と帝国学士院への改組
  2-2. 学術研究援助の始まりと出版事業
  2-3. 帝国学士院の財源とその活用、学界の代表として
  2-4. 官立試験研究所、陸海軍の研究拠点
 第3節 理化学研究所の設立
  3-1. 発端としての化学研究所と産業界との連携
  3-2. 第一次大戦の影響と政府における調整難航
  3-3. 研究所の建設、事業の開始と出費の増大
  3-4. 理研の運営と内部分裂
 第4節 文部省の科学研究奨励金と民間の学術支援
  4-1. 科学研究奨励金の開始
  4-2. 実業家による民間財団の形成
  4-3. 財閥からの寄附

第2章 学術の国際化と科学の組織化
 第1節 第一次大戦による国際学術組織の再編と国内への波及
  1-1. 戦勝国による国際学術組織の再編とドイツの排除
  1-2. 国内における学術研究会議の設置準備
  1-3. 建議提出から設置、組織内での批判
  1-4. 学術研究会議の事業展開
 第2節 科学外交としての太平洋調査機関への参画
  2-1. 汎太平洋学術会議への関与
  2-2. 豪州会議への参加
  2-3. 日本開催の準備
  2-4. 会議における学術言語の決定
 第3節 第3回汎太平洋学術会議の開催と成果
  3-1. 会議の開催状況
  3-2. 見学旅行の実施と歓迎会
  3-3. 日本開催の成果と意義
 第4節 明治・大正期における学術を取り巻く様相―基盤としての
      4事象
  4-1. 明治・大正期における学術をめぐる4事象
  4-2. 振興会前史としての明治・大正期の学術体制

第3章 日本学術振興会の設立経過
 第1節 有志総会から建議提出の興隆
  1-1. 昭和初期の情勢と初回の有志会合での議論
  1-2. 貴族院・衆議院への建議
  1-3. 第2回有志総会での紛糾
 第2節 御進講における提言と帝国学士院授賞式演説における政府への
      苦言
  2-1. 天皇への御進講という好機
  2-2. 天皇への御進講―日本と海外の現状の対比
  2-3. 天皇への御進講―経費の必要性と具体案
  2-4. 帝国学士院授賞式における院長演説
 第3節 予算確保の困難と海軍大将・財部彪合流による混迷
  3-1. 首相との事前協議と次年度予算要求
  3-2. 財部彪との会談、田丸節郎の存在
  3-3. 「学術産業振興院」構想
  3-4. 予算要求の結果としての3万円
 第4節 御下賜金御沙汰による設立への急展開
  4-1. 天皇からの御下賜金御沙汰
  4-2. 鳩山文相による第1回協議会
  4-3. 設立準備の最終局面
  4-4. 「学術研究の振興」から「学術振興」への収斂
  4-5. 産官学軍の連携における櫻井のイニシアティブ

第4章 日本学術振興会初期の組織運営と事業展開
 第1節 経営運営:理念、形態、初期構成員
  1-1. 財団法人の理念と目的
  1-2. 組織形態
  1-3. 構成員と発起人
  1-4. 財団の原資と外国事例の移入
 第2節 事業展開:研究活動と研究助成を主軸として
  2-1. 構想時点での事業計画
  2-2. 寄附行為における事業
  2-3. 研究助成事業の実際
  2-4. 研究助成の結果
  2-5. 研究事業の実際
  2-6. 研究事業の結果
  2-7. 事業選択の背景
 第3節 財政:予算の計画と配分、推移
  3-1. 構想段階における支出と財源見込み
  3-2. 昭和7・8年度の収入見込み
  3-3. 寄附状況と全国行脚
  3-4. 政府における学術予算

第5章 櫻井錠二の生涯における学術振興
 第1節 生い立ちと英才教育、英国留学、研究活動
  1-1. 幕末の加賀藩と母の教育熱心
  1-2. 英国への官費留学
  1-3. 教育貢献と純正理学追求とのはざまで
  1-4. 「国家と理学」におけるドイツの称賛、欧米視察旅行
 第2節 学術行政への邁進
  2-1. 学内行政への奔走と定年退職
  2-2. 理化学研究所設立への関与と副所長職
  2-3. 学術研究会議の設置と国際交流の推進
  2-4. 独創的研究をめざして
 第3節 櫻井錠二にとっての学術振興
  3-1. 退職後の活路と研究者としての「罪滅ぼし」
  3-2. 集大成としての日本学術振興会
  3-3. 戦争へのスタンスと学術振興の追求
  3-4. 第一世代としての使命感と限界

終章 日本学術振興会の設立の意義と櫻井錠二の役割
 第1節 総括
  1-1. 振興会の設立経緯
  1-2. 振興会の目的と意義
  1-3. 櫻井錠二の果たした役割
 第2節 本研究の学術的貢献と今後の課題
  2-1. 本研究のオリジナリティ
  2-2. 今後の課題の提示
  2-3. 日本近代の学術研究体制をめぐって
  
おわりに 科学技術・学術政策の課題解決に向けて
  1. 今日の日本学術振興会の姿
  2. 学術研究体制のあり方
  3. 科学・科学者と社会の関係

付録
参考文献
初出一覧
あとがき
Abstract
索引
著者山中千尋 著
発行年月日2023年02月15日
頁数408頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-2461-9