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源氏物語の婚姻と和歌解釈

定価: 13,200 (本体 12,000 円+税)
平安朝の婚姻実態、紫の上・明石の君の立場、夕顔・藤壺の和歌、紫式部集の新解釈等を平易な文章により簡潔に論証。源氏物語研究に新たな一歩をしるす、著者渾身の論考。

【著者略歴】
工藤重矩(くどう しげのり)
昭和21年、大分県生れ。
昭和44年九州大学文学部卒業。
昭和49年九州大学大学院博士課程単位取得。
九州大学助手を経て、昭和50年福岡教育大学講師。
現在、福岡教育大学教授。

【主要著書】
『源兼澄集全釈』(共著 平成3年 風間書房)
『平安朝の結婚制度と文学』(平成6年 風間書房)
『平安朝和歌漢詩文新考 継承と批判』(平成12年 風間書房)等。
目次を表示します。
Ⅰ 平安朝文学と婚姻制度
第一章 源氏物語の「幸ひ」「幸ひ人」をめぐって
 ―幸運を世間にうらやまれた女性たち―
 一 はじめに
 二 源氏物語の「幸ひ人」
   1 紫の上
   2 明石の尼君と明石の君
   3 宇治の中の君
   4 浮舟
 三 「幸ひ人」についての研究史
 四 歴史物語の「幸ひ人」
 五 「さいはひ」と「女のさいはひ」
 六 実母と養母―明石の君の場合―
 七 白氏文集新楽府「塩商婦」と「幸人」
第二章 紫の上に対する呼称―「対の上」の用法―
 一 はじめに
 二 対の上という語
 三 対の上の立場
 四 呼称の意図
第三章 鬚黒大将の離婚と再婚―式部卿宮娘と玉鬘―
 一 はじめに―平安時代の結婚制度―
 二 鬚黒大将の離婚と再婚
   1 鬚黒と北の方との結婚のいきさつ  
   2 鬚黒大将は北の方と別れたがっている
   3 鬚黒大将、玉鬘に通い始める
   4 玉鬘とは未だ忍び通う仲
   5 鬚黒大将、北の方との離婚を模索する
   6 北の方を遠ざける口実ができた  
   7 父宮の決定の重さ  
   8 鬚黒大将と父宮との交渉
   9 玉鬘と北の方のその後
 三 物語と法的制度
第四章 平安朝貴族の結婚と源氏物語―物語と歴史の間―
 一 はじめに―辻本論文の批判に応えて―
 二 研究史への対応の仕方
 三 辻本論文の個々の論点
   1 検討の前提―物語の資料価値
   2 女三宮降嫁と雲居雁の立場
   3 鬚黒大将と玉鬘と元の北の方
   4 夕霧と落葉宮
   5 官位の昇進と妻・妾の差
   6 嫡子の叙位
 四 一夫一妻の社会規範は何に起因するか   
第五章 平安時代の倫理・道徳と源氏物語―再婚をめぐって―
 一 はじめに
 二 規範としての「義夫・節婦」
   1 義夫は旧きを棄てず  
   2 家長としての義務を放棄するとき―源経相の場合
   3 「節婦」は再婚せず
 三 再婚する男女
   1 女の再婚
   2 再婚する男―藤原長家の場合  
   3 軽蔑を招く棄妻と再婚―藤原朝光の場合
 四 おわりに
第六章 師輔集の中の婚姻―内親王との交渉をめぐって―
 一 恋の和歌は誰と詠み交わすか
 二 師輔集に残される恋の歌―盛子と三人の内親王―
   北の方藤原盛子  勤子内親王  雅子内親王  康子内親王
 三 師輔と内親王との〈結婚〉―内親王降嫁の内実―
第七章 蜻蛉日記「さいはひある人のためには」の解釈
 ―道綱母における幸運と不運の意識―
 一 はじめに
 二 これまでの解釈
 三 さいはひある人のためには
   1 「さいはひある人」とはいかなる人か
   2 「ためには」
 四 「さいはひある人」と「さいはひなき人」
第八章 蜻蛉日記天禄二年条本文改訂試案
  ―「三夜」「十夜」の解釈を離れて―
 一 はじめに
 二 原文と改訂案
 三 「ると、ちぐさに」は「など、ちぐさに」
 四 「とよ」は「十夜」に非ず
 五 「きくところ」と「にくどころ」
 六 「なんよつ」は「などかく」
 七 蜻蛉日記本文改訂―恣意と合理の間で
第九章 婚姻制度と文学―その後の研究の現状と問題点―
 一 はじめに
 二 平安時代の婚姻制度についての理解―私の立場―
 三 日中制度比較の方法―胡潔の批判―
 四 呼称と実態―関口・服藤の実態理解―
 五 物語学のために―藤井貞和批判―
 六 おわりに―制度と文学―


Ⅱ 源氏物語の和歌解釈
第一章 夕顔巻「心あてに」「寄りてこそ」の和歌解釈―語義と和歌構文―
 一 はじめに
 二 「心あてに」の和歌をめぐって
   1 「心あてに」の語義―古今和歌集二七七番歌の解釈
   2 心あてにそれかとぞ見る
   3 躬恒の歌との関連―「それ」が指すもの
   4 白露の光そへたる夕顔の花―寓意は何処にあるか
   5 詠歌の事情―女から呼びかけた歌ではない
 三 「寄りてこそそれかとも見め」の和歌をめぐって
 四 おわりに
第二章 夕顔巻「心あてに」の和歌解釈再論―「それ」が指すもの―
 一 はじめに
 二 「心あてに」の和歌解釈の検討
   1 何が問題か
   2 歌の文脈と場の文脈
   3 和歌構文と和歌の解釈
   4 指示語としての「それ」のはたらき
   5 「それ」の和歌構文
 三 物語の和歌の解釈のために
第三章 夕顔巻「花に心をとめぬとぞ見る」の和歌解釈―打消と完了の「ぬ」―
 一 解釈の問題点
 二 注釈史―打消説と完了説の流れ―
 三 構文と文法
   1 「AにてBと知る(見る)」の構文
   2 おおやけごとにぞ聞こえなす
   3 論理の整合性と打消しと完了
 四 詠歌の意図
第四章 紅葉賀巻「袖ぬるる」の和歌解釈―文法と和歌構文―
 一 解釈の問題点
 二 「ぬ」完了説の論拠
 三 「ぬ」打消説の論拠
 四 構文的検討
   1 「と思ふにも」について
   2 「なほ」のはたらき  3 四句切れの和歌
 五 藤壺の和歌の解釈
 六 寓意の問題
第五章 真木柱巻と若菜上巻の「深山木に」の和歌解釈―比喩をめぐって―
 一 「み山木に羽うちかはしゐる鳥」の比喩の問題点
 二 「はねうちかはし」「ねたし」の語義
 三 「みやまぎ」について
 四 若菜上巻「深山木にねぐら定むる箱鳥」の比喩の問題点
 五 比喩の当否
 六 おわりに
第六章 鈴虫巻「わが宿からの」の和歌解釈―弁解の表現―
 一 問題の所在
 二 自分のことを言う返歌
   ―「みづからの御事は此の御返しによしなく」の検討―
   1 お詫びの言い方―下位から上位へ
   2 光源氏たちの挨拶の仕方
   3 源氏の返歌は無沙汰の弁解・お詫び
 三 昔今の御有様は誰の有様か―「次なる語にもかなはず」の検討―
   1 「同じ雲居」の語義
   2 「御有様」は源氏の有様
 四 月に催される懐旧の情
 五 源氏物語における月と懐旧
 六 おわりに
第七章 源氏物語の和歌における「両義的」解釈をめぐって
 一 はじめに
 二 「なほうとまれぬ」についての上原作和の解釈
 三 上原の拙論批判の論点
 四 解釈の立場―解釈における「正解」ということ―
 五 上原作和の再説について
 六 両義的解釈の当否―クリステワの挙例は両義的解釈の根拠たりうるか―
 七 諸解釈の対立と両義的解釈の発生
 八 おわりに
第八章 試みがてら逢ひ見ねば―蜻蛉日記と源氏物語の引歌一首―

Ⅲ 紫式部集注解
第一章 宣孝関係とされる歌の再検討
 はじめに
 一 三六・三七番―花の歌群―
   1 問題の所在―はたして宣孝と紫式部の新婚時代の和歌か
   2 寓意はあるか
   3 桜・桃・梨―花の歌群
   4 詠歌の場の推定
 二 四〇・四一番歌―哀傷の歌群の始まり―
   1 問題の所在―紫式部は薄鈍を着ていたか  
   2 夫の喪に「うすにび」を着るか
   3 「薄鈍」を着ているのは誰か
   4 薄鈍を着ているのは紫式部ではない
   5 可能性として
   6 哀傷の歌群
 三 四二・四三番歌―哀傷の歌群の続き―
   1 問題の所在―贈答の相手ははたして宣孝の娘か
   2 四二番の作者は誰か―詞書からの推定では娘
   3 「鴛鴦の子の跡」を見る―和歌からの推定では作者は娘ではない
   4 本文改訂の可能性
   5 四三番歌の解釈
   6 亡き人は娘の母親であろう
 四 おわりに 
第二章 紫式部集注釈不審の条々
 一 五五・五六番歌―本文からの逸脱―
   1 問題点―詞書の解釈
   2 詞書の解釈―試みの解釈
   3 五五番歌の解釈
   4 依拠すべきは本文
 二 一〇二番―弁解の掛詞―
   1 問題点―「さしこえて」の語義
   2 「さしこえて」の語義の検討
   3 返歌の意図
 三 一一三番―助詞・助動詞の軽視―
   1 問題点―文法と語義  
   2 「うちとく」の語義  
   3 「を」の存在
   4 「ひとこと」に宛てる漢字  
   5 「む」の用法と「ひとこと」の語義
   6 返歌の意味
 四 一一六番―本文校訂の是非―
   1 問題点―本文校訂は必要か  
   2 時雨は晴雨定まらず降る  
   3 詠歌時の天候  
   4 「くまもなく」が合理的な本文
 五 一二二番左注―語義と詠歌状況―
   1 問題点―紫式部の歌への思いこみ  
   2 「おほやけこと」の語義
   3 おほやけ言の和歌
 六 おわりに

初出一覧
索引
あとがき

著者工藤重矩 著
発行年月日2009年10月15日
頁数430頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-1753-6

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