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アメリカ合衆国におけるゼネラルサイエンスの成立過程の研究

定価: 23,100 (本体 21,000 円+税)
すべての人々のための科学教育がひとつの教科として成立するまでの歴史的ダイナミズムをアメリカのゼネラルサイエンスを事例として明らかにしている。

【著者紹介】
野上智行(のがみ ともゆき)
1946年生
神戸大学教授
博士(教育学)
目次を表示します。
まえがき
謝辞
序章 研究の意図と方法
第1節 本論文の意図 
第2節 先行研究の概要
第3節 研究の視点と方法
第1部 ハイスクール制度と科学教科の成立
第1章 公教育としての科学教育の起源
 第1節 イギリス非国教派の実利的価値の移入
  1 イギリス非国教派と科学
  2 科学の実際的・実用的価値
  3 科学と宗教の調和
 第2節 アカデミーにおける科学教育論 
  1 植民地における科学教育
  2 アカデミーの発展と科学教育
  3 フランクリンの科学教育論
 第3節 ハイスクールの発展と科学教科の統廃合
  1 ハイスクールの発展と各種教育内容の導入
  2 公教育の確立要請と教科の統廃合
第2章 ハイスクール制度の成立と科学教科の成立
第1節 大学からのハイスクール教科への要請―「物理学」を例として―
  1 大学の教育内容への自然科学の導入
  2 大学入学要件としての物理学の認可
  3 ハーバード・リストの40の物理学実験課題 
  4 ハーバード・リストのハイスクール物理学への影響
  5 大学による物理学実験強要への批判
第2節 十人委員会による4年制ハイスクールの科学教科案
1 中等教育改善の要請 
  2 十人委員会の要請と各分科会からの答申の特徴
  3 十人委員会による要約と提案の特色
  4 十人委員会報告の影響 
  5 初等教育の短縮と中等教育の拡充
  6 より明確な中等学校科学教科構成の要求
第2部 ゼネラルサイエソスの萌芽としての自然地理学を中心とした教科論
第3章 「自然地理学」を巡る科学教科論
 第1節 十人委員会における「自然地理学」の位置づけ
  1 第1学年科学教科としての「応用地理学」の提案
  2 地理学分科会提案における教科概念の混乱
  3「応用地理学」と「自然地理学」の教科としての暖昧性
第2節 導入教科としての「自然地理学」と一般教育としての「自然
地理学」
1 ゲーオーの一般教育としての自然地理学論
  2 ハックスレーの一般教育としての「地文学」
  3 ディビスの体系科学としての「自然地理学」論
第3節 教科としての「自然地理学」の衰退
1 1910年代における「自然地理学」の衰退
  2 「一般教育としての自然地理学」への要請とその限界
第4章 自然地理学に代わるハイスクール基礎科学教科論
 第1節 各種委員会におけるハイスクール基礎科学教科の検討
  1 1905年「生物部会」における‘エレメンタリィ・サイエンス’論
  2 1908年「教育における生物科学の機能と組織に関するシンポジウム」
  3 1910年「科学と数学教師の中央委員会」による‘イントロダクトリ
ィ・サイエンス’の構想
  4 1911年「ハイスクールと大学の連絡に関する9人委員会」による‘イ
ントロダクトリィ・サイエンス’の構想と位置づけ
  5 1914年「化学と物理学の太平洋協会」による‘ゼネラル・サイエン
ス’構想とその委員会報告
 第2節 カードウエルとその委員会による科学教科融合論
  1 1913年「ハイスクール科学コースの融合に関する委員会」の準備報告
  2 1915年「科学と数学教師の中央委員会」の報告
  3 カードウエルを中心とする委員会の意義
第3節 NEAの「中等教育の改造に関する生物学分科会」の準備報告 
1 準備報告の審議の背景 
2 2年課程コース‘エレメンタリィ・サイエンス’の提案(1914年)
3 提案された学習内容のモデル
  4 準備報告の特色
第4節 中等教育の改造に関するNEAの生物委員会の1916年の改訂報告 
1 第8学年を取り込んだ新しい2年課程科学コース‘エレメンタリィ・
サイエンス’の提案
  2‘エレメンタリィ・サイエンス’の目標の検討
  3 目標達成の方策
  4 2年課程コース‘エレメンタリィ・サイエンス’の内容の検討
第3部 ゼネラルサイエンス成立基盤としての科学教育論
第5章 ゼネラルサイエンス成立の背景としての科学教育論
 第1節 すべての人々のための科学教育論の背景
  1 アメリカ産業の発達と科学
  2 都市人口の急増と農村の疲弊
  3 科学と計画
 第2節 自然科学の実利的価値の導入
  1 民主主義思想の拡大と科学の実用的価値の認識
2 ハリスの初等学校科学教育論 
第3節 発見的教授法の導入
1 アガッシの博物館における発見法の指導
  2 ペニキーズ島における野外での指導法の創始
  3 発見法の教育的価値
第4節 民衆教育の中心教科としての科学教育論
1 活動を重視したクインシーにおける実践
  2 民衆教育の一課程としての諸科学の導入
  3 野外観察を中心とした教科統合論
  4 ネィチャースタディの創始 
  5 教科の分立と統合に関する論議 
第5節 自然愛育成としてのネィチャースタディ論 
1 コーネル大学農学部を中心としたネィチャースタディ運動 
  2 ポイデンによる「自然愛」の強調
  3 ホッジによる「人間にとっての価値」の強調
第6節 ネィチャースタディ概念の変革と中等科学教育との連結
1 ホレースマン校でのネィチャースタディ 
  2 ホレースマン校での「科学」の教育的価値の解釈 
3 ホレースマン校のネィチャースタディカリキュラム
4 教科としてのネィチャースタディの形成
5 ネィチャースタディ概念の拡張と中等科学教育との連結 
第6章 プラグマティズム科学教育論
 第1節 プラグマティズムからみた科学教育
  1 アメリカ科学の功利主義的性格 
  2 科学教育論としてのプラグマティズム
  3 デューイの『学校と社会』における科学教育論
  4 デューイ『民主主義と教育』における科学教育論
第2節 スティムソンの農業プロジェクト 
1 職業教育振興の要請 
  2 ノースハンプトン農業学校におけるプロジェクト
第3節 ウッドハルのプロジェクト/ゼネラルサイエンス論
1 ウッドハルの大学準備物理学教育批判
  2 ウッドハルのゼネラルサイエソス論におけるプロジェクト
  3 ウッドハルのプロジェクト論の理論的背景
  4 キルパトリックのプロジェクト法とその影響
第4部 ゼネラルサイエソスの成立と限界
第7章 新教科「ゼネラルサイエンス」の成立
 第1節 NEA「中等教育の主要原理」報告
  1 中等教育改造の必要性 
  2 民主主義社会における教育の目標
  3 教育の主要目標 
  4 中等教育の拡充としてのハイスクール構想
第2節 NEA「中等学校における科学の改造」報告
1 報告の位置づげと内容構成 
  2 第一部「中等学校における科学の目標、方法、構成」
  3 提案された学校規模ごとの教科配置案
第3節 NEA科学改造委員会のゼネラルサイエンス 
1 新教科ゼネラルサイエンスの設置
  2 教材内容選択の原理
  3 大単元による内容構成 
4 学習構成の方法
  5 トピックの例
  6 ゼネラルサイエンスの教科構造の成立
第4節 科学改造委員会報告でのプロジェクト法とトピック法の相克
1 トピック法を採用したゼネラルサイエンス
  2 すべての科学を構成する原理としてのプロジェクト法の拒否
  3 プロジェクト法による実験室活動の提案
  4 教室授業へのプロブレム―プロジェクト―トピック法の適用
  5 生徒と教師、学校、家庭、地域との共同
  6 委員長カードウエルの立場とその影響
第8章 1910-20年代におけるゼネラルサイエンスの批判的検討
 第1節 ゼネラルサイエンスの実践とプロジェクト法の限界
  1 バイリングのプロジェクト法による第8学年の科学 
  2 ミネソタ州におけるゼネラルサイエンスとプロジェクト 
  3 カリフォルニア州におけるゼネラルサイエンスとプロジェクト
  4 その他の州におけるゼネラルサイエンスの問題点
 第2節 教科書における実験とプロジェクトの位置づけ
  1 カードウエルとアイケンベリィのゼネラルサイエンスの特色
  2 ウイットマンの「市民科学」(Civic Science)の構想
 第3節 デューイによるゼネラルサイエンス批判
1 科学の知識の価値と目的としての科学
2 つまみ食い的ゼネラルサイエンスへの批判
3 もうひとつのゼネラルサイエンス構想
4 生活の科学と専門科学
終章 ゼネラルサイエンスの限界と展望
 第1節 ゼネラルサイエンスの成立過程 
  1 1910-20年代ゼネラルサイエンスの特徴
  2 3つの科学教育論とゼネラルサイエンスの成立
 第2節 自然科学の理想主義とゼネラルサイエンス
  1 自然科学に対する理想主義の教育への適用
  2 ゼネラルサイエンスの限界 
  3 科学教育における楽観主義 
  4 ネオ・ゼネラルサイエンスへの視点と展望
主要報告書一覧
著者野上智行 著
発行年月日1994年02月28日
頁数524頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-0878-7