博士論文・心理学・教育学など書籍・学術出版社|(株)風間書房

学びあう絵本と育ちあう共同行為としての読み聞かせ

定価: 9,900 (本体 9,000 円+税)

心理学的アプローチと文学的研究による複合的視点から、幼児期の子どもとその養育者にとっての読み聞かせ活動と絵本の意義を考察。親子のやりとりの媒体となる絵本観を問い、今後の読み聞かせ研究、絵本研究を進めるための視座を提示する。

【著者略歴】
赤羽尚美(あかはね なおみ)
1967年 長野県生まれ
2011年 白百合女子大学大学院文学研究科発達心理学専攻 修了(修士 心理学)
2012年から2017年まで都内メンタルクリニックに臨床心理士として心理カウンセリングに従事
2011年から2017年11月現在 白百合女子大学生涯発達研究教育センター研究員
2013年から2017年11月現在 都内公立小学校にスクールカウンセラーとして勤務
2016年 フェリス女学院大学人文科学研究科博士後期課程満期退学(博士 文学)

2017年11月現在 心理臨床活動に携わる傍ら、小田原短期大学保育学科通信教育課程講師として教育・研究活動に従事している。
目次を表示します。
まえがき
第Ⅰ部 本研究の主題と絵本の意義
序論
 1節 本研究の目的と課題
  (1)研究の背景①―少子化と育児力の低下
  (2)研究の背景②―親子間の発達・母子相互作用の重要性
  (3)研究の背景③―社会的相互作用を促す道具の重要性
  (4)先行研究の評価と課題
 2節 方法
 3節 本研究の意義・期待される結果
第1章 絵本とは何か
 1節 絵本のはじまり
 2節 絵本の定義
  (1)絵本の機能
  (2)絵本の変遷―西欧
  (3)絵本の変遷―日本
  (4)絵本とは何か―定義の再考
 3節 絵本研究の動向
  (1)学問としての絵本
  (2)紀要論文
  (3)研究書
第2章 子ども観の成立と現代社会への展開
 1節 アリエスの分析
  (1)アリエスが発見した「子ども」
  (2)無垢と教育
 2節 子ども観と教育・文学への展開
  (1)ピューリタニズムの影響から新たな教育思想へ
  (2)文学作品と子ども
  (3)教育と子どもへの関心
  (4)「子ども」の対象の広がり
 3節 子どもの文化の発達―児童文学と子どもの学び
  (1)ニューベリーの貢献
  (2)子どもの文学にみる新しい子ども観の展開
 4節 現代の子ども観と近代以降の子どもの人権
  (1)子どもの権利思想
  (2)教育制度の確立
  (3)工場法の制定
  (4)子どもの権利の新しい流れ
 5節 現代の子ども観と大人の感情
  (1)大人と子どもの関係の変化
  (2)ポストマンの指摘―アメリカのメディアと子ども期の消失
  (3)日本の子ども観とメディアの影響
  (4)子宝としての子ども
  (5)二つの子どものイメージ
  (6)子どもらしい子ども
  (7)理想と現実―優等生の勝利
  (8)失われた子ども時代
第Ⅱ部 絵本を介した養育者と子どもの社会的相互活動
 第3章 絵本の読み聞かせと子どもの発達
 1節 読み聞かせとは
 2節 読み聞かせと子どもの発達に関する先行研究―理論的背景
  (1)乳児のコミュニケーション機能
  (2)Vygotskyの精神発達理論
  (3)対話性―Bakhtinの発話の概念
  (4)Brunerのコミュニケーション学習
 3節 絵本の読み聞かせに関する先行研究
  (1)集団保育・教育場面での絵本の読み聞かせ研究
  (2)家庭を対象とした読み聞かせ研究
  (3)障害児教育・心理臨床的分野での読み聞かせ研究
  (4)絵本の内容や要素・特徴に焦点化した研究
第4章 理論および中心的先行研究の評価について
 1節 読み聞かせの研究におけるBrunerの貢献―共同注意の重要性
 2節 読み聞かせ活動の機能と構造
  (1)読み聞かせによる母子行動の変化と言語発達
  (2)仮説モデルの検証研究と意義
  (3)共同研究プロジェクトの展開(1)
  (4)共同研究プロジェクトの展開(2)
 3節 3歳前の子どもにとっての絵本とは何か―心理学的立場の絵本論
  (1)乳児が絵本と出会うまで
  (2)絵本との出会い
  (3)読み聞かせとことばの広がり
  (4)心理学的絵本論―ブルーナの絵本の例
  (5)絵本を媒介する心理学的研究と文学的研究
 4節 本調査研究の意義
第5章 調査研究① 家庭での絵本の読み聞かせ活動と子どもの社会性の発達との関連について
 はじめに
 1節 家庭内の読み聞かせ活動の実態と子どもの社会的スキルとの関連
  (1)方法
  (2)結果
   1)結果1:変数の性質:因子分析による尺度の検討
   2)結果2:調査対象家庭の幼児の社会的スキル
   3)結果3:調査家庭のプロフィール
   4)結果4:調査家庭の読み聞かせ状況
   5)結果5:読み聞かせ状況と子どもの社会的行動との関連
   6)結果6:読み聞かせ活動の維持・発展と子どもの社会性発達における因果モデルの推定
  (3)質問紙調査の考察
   1)考察1:家庭での読み聞かせの状況について
   2)考察2:読み聞かせの状況と子どもの社会的行動の発達との関連
 2節 読み聞かせ場面の観察と母親へのインタビュー
  (1)方法
  (2)結果と考察
   1)結果と考察1:0歳児の事例 早期導入の読み聞かせ
   2)結果と考察2:2歳児の事例 ことばの獲得時期における読み聞かせの導入
   3)結果と考察3:4歳児の事例 身辺自立の時期における読み聞かせの導入
   4)結果と考察4:4歳児の事例 安定期の読み聞かせ(好きな絵本)
   5)結果と考察5:3歳児の事例 安定期の読み聞かせ(難しい絵本への挑戦)
   6)結果と考察6:読み聞かせの停滞 2歳児の事例
 3節 調査研究①の総合考察
第6章 調査研究② 幼児の保護者の絵本観と養育ストレスとの関連について
 はじめに
 1節 目的と方法
  (1)目的
  (2)方法
 2節 結果1:調査家庭のプロフィールについて
 3節 結果2:読み聞かせと絵本観について
 4節 結果3:養育ストレス感について
 5節 結果4:読み聞かせと育児ストレス
 6節 調査研究②の考察
  (1)考察1:幼児の家庭の読み聞かせ状況と親の絵本に対する認識
  (2)考察2:絵本の読み聞かせと養育ストレス感
第7章 調査研究③ 幼児の保護者の養育ストレスと読み聞かせとの因果関係について
 はじめに
 1節 方法
 2節 結果1:子どもの行為に対する認知尺度
 3節 結果2:調査家庭のプロフィール
 4節 結果3:調査家庭の読み聞かせ状況と子どもの行動認知の検討
 5節 結果4:読み聞かせと養育ストレス感
 6節 結果5:養育ストレス感と子どもの行動認知の関連性
 7節 結果6:読み聞かせ状況と養育ストレス感の因果関係の推定
 8節 調査研究③の考察
第Ⅲ部 本研究の展開と結論
第8章 大人が絵本を楽しむための実践活動
 はじめに
 1節 目的と方法
  (1)目的
  (2)方法
 2節 結果と考察1:参加者の構成と参加状況
 3節 結果と考察2:事前アンケート調査
 4節 結果と考察3:毎回のアンケート調査
 5節 結果と考察4:最終回終了後のアンケート調査
 6節 結果と考察5:参加者の感想と自由記述
 7節 「大人が絵本を楽しむための実践活動」の総合考察
結論
第9章 本研究の概要
 1節 本研究を始めた経緯
 2節 本研究の背景と目的
  (1)背景
  (2)目的1:文学的視点からの絵本研究
  (3)目的2:親子の発達的読み聞かせの活動の維持・発展と負の側面
  (4)目的3:養育者の絵本の楽しみ方を深めるための絵本勉強会の可能性
 3節 本研究の結果と示唆
  (1)目的1:文学的視点からの絵本研究について
  (2)目的2:親子の発達的読み聞かせ活動の維持・発展と負の側面について
  (3)目的3:養育者の絵本の楽しみ方を深めるための絵本勉強会の可能性について
第10章 本研究の結論と意義
 1節 本研究の結論
 2節 本研究の意義


引用・参考文献
あとがき
著者赤羽尚美 著
発行年月日2017年12月20日
頁数448頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-2215-8