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生活習慣形成における幼児の社会情動的発達過程

相互主体的関係を維持する葛藤に着目して

定価: 9,900 (本体 9,000 円+税)

保育の場で、幼児は片付けという生活習慣をどのように形成していくのか。人的・物的環境との相互作用から実証的に捉えたプロセスを、社会情動的発達過程として解明。

【著者略歴】
平野 麻衣子(ひらの まいこ)
2013年3 月 青山学院大学大学院教育人間科学研究科教育学専攻修士課程修了 修士(教育学)
2016年11月 日本乳幼児教育学会「研究奨励賞」受賞
2017年9 月 青山学院大学大学院教育人間科学研究科教育学専攻博士課程修了 博士(教育学)
現在 兵庫教育大学大学院学校教育研究科 講師

著書・論文
「片付け場面における子どもの育ちの過程」(『保育学研究』第52巻第1 号)2014年
「園の片付けにおける物とのかかわり」(『保育学研究』第53巻第1 号)2015年
「保育カリキュラムにみられる生活習慣形成プロセス」(『乳幼児教育学研究』
第24号)2015年
『保育内容 環境』萌文書林,2016年(分担執筆)
『保育実践の中にある保育者の専門性へのアプローチ』ミネルヴァ書房,2018年(第10章)
目次を表示します。

第Ⅰ部 幼児期の生活習慣形成過程の現代的意義

序章 研究の背景
 第1節 幼児教育・保育の研究動向
  1. 幼児の経験内容を構成する保育「プロセスの質」
  2. 幼児期に育むべき社会情動的発達
 第2節 幼児期の生活習慣への着目
  1. 幼児期の重要な発達課題
  2. 幼児期の教育と小学校教育の接続及び学力との関連における
    生活習慣

第1章 幼児期の生活習慣形成をめぐる研究の動向と研究の目的
 第1節 幼児期の生活習慣形成へのアプローチ
  1. 幼児期の生活習慣形成に関する先行研究
  2. 乳幼児期の情動発達に関する先行研究
  3. 本研究のアプローチ
 第2節 片付けに関する先行研究の意義と課題
  1. 片付けという生活習慣の特徴
  2. 保育学研究における片付けの先行研究の整理
 第3節 本研究の目的・方法及び構成
  1. 研究の目的
  2. 研究の方法及び構成

第2章 生活習慣形成に関する理論的枠組みの探求
 第1節 本章の目的と方法
  1. 本章の目的
  2. 研究の方法
  3. 研究の対象
 第2節 保育カリキュラムにおける生活習慣形成の位置づけ
  1. 生活習慣形成を最初に位置づけた『コンタクト・カリキュラム』
  2. わが国における保育内容としての生活習慣形成の位置づけ
 第3節 及川平治『生活単位の保育カリキュラム』にみられる
    生活習慣形成
  1. 1904年―1917年 日課「整理」の中で指導される習慣
  2. 1918年―1925年 生活と教育の統合
  3. 1926年―1931年 教育測定への着目
  4. 1931年頃 カリキュラム・スケールを使って養成される習慣
 第4節 倉橋惣三『系統的保育案の実際・解説―生活訓練』に
    みられる生活習慣形成
  1. 1909年―1919年 情緒的習慣への着目
  2. 1922年―1925年 社会生活への着目
  3. 1926年―1935年 性情への着目
  4. 1936年 個々の習慣への着目
 第5節 倉橋惣三と及川平治の比較分析
  1. 子ども理解
  2. 社会生活概念
  3. 習慣概念
  4. 保育カリキュラム編成
  5. 考察
 第6節 生活習慣形成を捉える理論的枠組み
  1. 生活習慣形成を捉える情動的発達過程という視点
  2. 生活習慣形成過程を支える保育者と幼児との関係性
  3. 残された課題

第Ⅱ部 保育の場における生活習慣形成過程の実態

第3章 対人関係の視点から捉える社会情動的発達過程
 第1節 本章の目的
 第2節 研究の方法
  1. 研究対象
  2. 研究方法
  3. 事例分析の視点
 第3節 片付け場面における幼児の社会情動的発達過程
  1. 保育者との信頼関係を基盤に
  2. 友達とのかかわりの中で
  3. 考察
 第4節 生活の自立における自己充実と社会情動的経験

第4章 対物関係の視点から捉える社会情動的発達過程
 第1節 本章の目的
 第2節 研究の方法
  1. 研究対象
  2. 研究方法
  3. 事例分析の視点
 第3節 園の片付けにおける幼児の物とのかかわり
  1. 定型的行為としての片付け
  2. 他者の創造的行為と意図を知る片付け
  3. 物を占有する過程に基づく片付け
  4. 創造物を自分で納得して解体していく片付け
  5. 他者の占有のありようを断片的に再現する片付け
  6. 考察
 第4節 生活の自立における連続性と他者との相互理解

第5章 幼児の経験内容を支える保育カリキュラム
 第1節 本章の目的
 第2節 『幼稚園教育要領』における生活習慣形成の位置づけ
  1. 1956(昭和31)年 『幼稚園教育要領』
  2. 1964(昭和39)年 『幼稚園教育要領』第1次改訂
  3. 1989(平成元)年 『幼稚園教育要領』第2次改訂以降
 第3節 研究の方法
  1. 研究対象
  2. 研究方法
 第4節 保育計画に位置づく生活習慣形成過程
  1. 保育計画における生活習慣形成の位置づけ
  2. 位置づけにみられる3つの特徴
 第5節 対象児の生活習慣形成過程と援助プロセス
  1. 対象児(ケイ)の生活習慣形成過程と援助プロセス
  2. 対象児(ショウ)の生活習慣形成過程と援助プロセス
  3. 一人ひとりの経験内容を保障する保育計画
 第6節 大綱化のもとで求められる保育者の専門性
  1. 生活習慣の指導で陥りやすい保育計画作成と形式的な指導
  2. ストーリーやデザインとしての保育計画
  3. 大綱化のもとで問われる保育カリキュラム実践の質

第6章 援助プロセスにみる保育者の葛藤維持
 第1節 本章の目的
 第2節 研究の方法
  1. 研究対象
  2. 研究方法
  3. 援助分析の視点
 第3節 ケイに対する保育者の援助と葛藤
  1. ケイの「私」を共感的に認める中での葛藤
  2. 「私たち」を提示する際の葛藤
  3. ケイの「私」理解を揺るがす葛藤
  4. 幼児同士の間で顕在化する「私」と「私たち」をめぐる葛藤
  5. バランスをとりながら生活するケイの姿から見直す
  6. ケイの生活習慣形成を支える援助プロセス
 第4節 ショウに対する保育者の援助と葛藤
  1. 片付けるショウを認める中での葛藤
  2. 「私」と「私たち」の硬さに対する葛藤
  3. ショウなりの「私」を期待しながら見守る援助
  4. 保育者の揺れがショウに伝わってしまうことへの葛藤
  5. ショウの生活習慣形成を支える援助プロセス
 第5節 片付け場面における保育者の専門性
  1. 葛藤の具体的内容
  2. 葛藤維持プロセス

終章 幼児の社会情動的発達過程を支える相互主体的関係
 第1節 各章の総括
 第2節 本研究の成果と意義
  1. 生活習慣形成における自己充実の重要性
  2. 螺旋状の発達過程の様相
  3. 幼児の経験内容を支える保育者の葛藤維持プロセスの解明
 第3節 今後の課題

引用文献
謝辞
著者平野麻衣子 著
発行年月日2018年12月05日
頁数290頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-2248-6