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器楽教育成立過程の研究

定価:本体 9,000 円+税

器楽教育はどのような歴史的変遷を経て、初等教育において成立したのか。器楽教育の成立を解明するために音楽教育研究団体に着目し、実践相互の関係や現場教師と楽器産業界および教育行政の関係を考察する。

【著者略歴】
樫下達也(かしした たつや)

1981年 奈良県生まれ。2歳より大阪府に育つ。
2006年 和歌山大学大学院教育学研究科修士課程修了。
2006年 大阪府岸和田市にて小学校教諭(~2012年)。
2015年 日本学術振興会特別研究員DC(~2017年)。
2017年 神戸大学大学院人間発達環境学研究科博士後期課程修了。
博士(教育学)。
2017年 京都教育大学音楽科准教授。現在に至る。

滋賀大学、京都女子大学、神戸松蔭女子学院大学などで非常勤講師を務める。
専門は音楽教育学、音楽教育史。博士(教育学)。
目次を表示します。

序章
 第1節 研究課題と問題の所在
  1 研究課題―音楽室の楽器たち
  2 問題意識―器楽教育成立過程研究の意義
 第2節 先行研究の検討
  1 音楽教育史研究の動向と本研究の位置づけ
  2 器楽教育に関する歴史研究
 第3節 研究の視点と方法
  1 “ある教育”の成立過程を明らかにした先行研究における
    研究視点
  2 器楽教育成立過程研究における研究視点と成立の3要件
  3 研究の方法―音楽教育研究団体に着目した文献研究
  4 器楽教育成立過程の時期区分と成立のメルクマール
 第4節 本書の構成と概要

第1部 戦前から戦中にかけての器楽教育の黎明と試行的実践の諸相

第1章 器楽教育黎明の歴史的条件の成熟
 第1節 唱歌教育の成立と音楽教師の研究者的資質の成熟
  1 唱歌教育の成立―官から民へ
  2 言文一致唱歌運動にみる音楽教師の研究者的資質の成熟
 第2節 大正新教育における芸術としての音楽教育の志向
  1 童謡運動
  2 学校現場における音楽教育の改革
 第3節 音楽教師たちの団結と組織化
  1 東京高等師範学校附属小学校初等教育研究会と
    「全国訓導(音楽)協議会」
  2 日本教育音楽協会の設立(1922年)
 第4節 1920年代における音楽教育現場への楽器導入の試み
  1 千葉県師範学校附属小学校「唱歌科」における楽器指導
  2 神奈川県鎌倉郡大正尋常高等小学校における希望者への
    楽器指導
  3 奈良女子高等師範学校附属小学校・鶴居滋一の自由作曲におけ
    る楽器の使用
 小結―歴史的条件の成熟

第2章 黎明期の器楽教育実践の動向
     ―学校音楽研究会と日本教育音楽協会が果たした役割
 第1節 器楽教育成立過程における学校音楽研究会の位置
  1 学校音楽研究会の設立(1933年)とその背景
  2 器楽教育の黎明における学校音楽研究会の役割
  3 児童の音楽生活を重視する音楽教育思潮と器楽教育
 第2節 器楽教育の実践校とその広がり
  1 雑誌『学校音楽』にみる器楽教育の実践校
  2 器楽教育の実践地域―東京を中心とする広がり
 第3節 多様な合奏形態とその特徴
  1 合奏形態の分類
  2 合奏形態と校種および指導の場との関連
 第4節 「国民学校令施行規則」(1941年)に位置づけられた器楽教育
 小結―黎明期の器楽教育の全体的動向

第3章 黎明期の器楽教育実践者たちの実像
     ―学校音楽研究会の研究授業を中心に
 第1節 「楽器教授」の先駆的試み―小出浩平
  1 音楽それ自身の独立した美
  2 芸術教育としての「唱歌科」へ―「従来の唱歌」批判
  3 「楽器教授の研究」とその「挫折」
 第2節 児童の音楽生活へのまなざし―瀬戸尊
  1 児童の観察から始まった器楽教育実践
  2 音楽教育の要としての器楽教育
  3 研究授業の実際
 第3節 簡易楽器指導の唱導者―上田友亀
  1 音楽教育の「高踏的傾向」と「歌謡万能唱歌教育」への批判
  2 簡易楽器の導入
  3 研究授業の実際
 第4節 ハーモニカ合奏の研究と実践―山本栄
  1 最も音楽的な簡易楽器としてのハーモニカ
  2 ハーモニカという楽器それ自体の研究へ
  3 研究授業の実際
 小結―黎明期の器楽教育実践者にみる思想の共通点と相違点

第4章 学校教育へのハーモニカ導入の一断面
     ―東京市小学校ハーモニカ音楽指導研究会の設立過程
 第1節 全日本ハーモニカ連盟の設立(1927年)
  1 明治期から昭和初期にかけてのハーモニカ音楽界の動向
  2 全八連の設立と機関誌『ハーモニカ・ニュース』
  3 楽器メーカー・トンボ楽器
 第2節 ハーモニカ音楽界の停滞的状況
  1 「ハーモニカは玩具か?」騒動
  2 ハーモニカ音楽人の自負と矜持
  3 大衆音楽界に進出する純音楽家たちとハーモニカ音楽人の
    危機感
 第3節 東京市小学校ハーモニカ音楽指導研究会の設立(1937年)と
      その背景
  1 小学校の音楽教師たちの思惑
  2 ハーモニカ音楽界の人々の思惑
 第4節 東京市小学校ハーモニカ音楽指導研究会の活動の実際と
      その意義
  1 東ハ音研の二つの成果と発表演奏会の開催
  2 東ハ音研の組織的特徴楽器産業界との連携
  3 東ハ音研の歴史的意義
 小結―小学校へのハーモニカ導入とその歴史的意味

第2部 戦後における器楽教育の全国への普及と成立

第5章 戦後教育改革と文部省による器楽教育導入
     ―文部省『合奏の本』を中心に
 第1節 『合奏の本』発行(1948年)とその背景
  1 戦後の器楽教育導入の「三つの課題」
  2 戦後の国定音楽教科書にみる器楽教育
 第2節 『合奏の本』の分析―演奏教育の実例指導書
  1 出版状況および編集体制
  2 構成および内容
 第3節 『合奏の本』発行後の活用
  1 音楽教育雑誌における特集および講習会開催
  2 『合奏の本』に準拠した教材の出現と文部省によるレコード化
 小結―『合奏の本』の器楽教育成立過程における位置

第6章 戦後教育改革期における現場教師による器楽教育普及活動
     ―新生音楽教育会の活動を中心に
 第1節 新生音楽教育会の設立(1947年)とその理念
  1 設立過程―山本栄、瀬戸尊、上田友亀を中心に
  2 設立理念―児童の生活を重視する音楽教育の実現
 第2節 新生音楽教育会による器楽教育普及活動
  1 白桜社とのタイアップによる楽器の確保
  2 器楽指導講習会―駆け回る器楽教育の「伝道師」たち
  3 器楽教育用楽譜『簡易楽器合奏編曲集』の発行
 第3節 新生音楽教育会から日本器楽教育連盟の設立へ
 小結―新生音楽教育会の器楽教育成立過程における位置

第7章 戦後教育改革期における行政による教育用楽器の普及施策
     ―文部・商工(通産)・大蔵各省と楽器産業界の動向を中心に
 第1節 教育用楽器の確保と普及に向けた各省庁の動向
  1 戦後の物資不足と楽器産業界の停滞
  2 文部省による教育用楽器の範囲の明確化
  3 教育用品であることの特権
 第2節 教育用楽器の品質保証
      ―楽器日本工業規格(JIS)の礎石となった教育用楽器規格
  1 粗造品の濫発と教育用楽器審査の開始
  2 審査から規格の制定へ
  3 標準化のもたらすもの―大量生産と低廉化
 第3節 楽器の普及のための免税施策と物品税撤廃運動
  1 免税違反への取り締まり強化と物品税撤廃運動
  2 大蔵省の「親心」による免税手続き簡素化と税率引き下げ
 小結―楽器産業界と教育界の表裏一体性

第8章 戦後教育改革期の公立小学校における器楽教育
     ―岐阜県多治見市立養正小学校の実践
 第1節 養正小学校における器楽教育開始の背景
  1 実験学校としての養正小学校
  2 「自由研究」のクラブ活動として開始された器楽教育
 第2節 校條武雄の器楽教育の理念
  1 戦前から戦中にかけてのブラスバンド指導
  2 戦後新教育における器楽教育の意義
  3 器楽教育実施の基本方針―器楽合奏団を頂点とする
    ピラミッド構造
 第3節 養正小学校器楽合奏団の活動の軌跡
  1 楽器の確保―編成の漸次的拡大
  2 演奏曲の発展―歌唱曲からクラシック曲へ
  3 全国から注目される器楽合奏団へ
 第4節 普通授業における器楽教育の実践―第4学年を中心に
  1 児童の実態と教師の力量を考慮したカリキュラムの構成
  2 木琴を中心とするリズム指導の体系
  3 授業記録から―児童の自主性の尊重と教師の力量形成
 小結―器楽教育成立過程における養正小学校の位置

第9章 文部省実験学校の器楽教育実践と1958年改訂「小学校学習
     指導要領」
     ―群馬県前橋市立天川小学校のリード合奏の研究を中心に
 第1節 天川小学校における器楽教育の研究
  1 天川小学校が指定された背景―科学的認識に基づく実験的研究
  2 研究の過程―菅原明朗の指導とリード合奏の「開発」
  3 文部省による研究成果の発表
    ―「より完全な合奏」としてのリード合奏
 第2節 準備されていた結論―文部省『リード合奏の手引』(1954年)
  1 リズム合奏と木琴への批判
  2 トンボ楽器優位の手引
  3 器楽教育成立過程における天川小学校の研究の位置
 第3節 リード合奏でなければならないのか?
      ―合奏形態をめぐる論争
  1 論争の背景―文部省の独善
  2 論争の主題―リード合奏であるべきか
  3 論争の本質的な論点
    ―「教育的見地」と「芸術的見地」のジレンマの再現
 第4節 1958年改訂「小学校学習指導要領」における器楽教育
 小結―器楽教育の指導義務化と行政面からの器楽教育成立

第10章 器楽教育の成立へ
      ―日本器楽教育連盟の設立と活動を中心に
 第1節 日本器楽教育連盟の設立過程とその特徴
  1 設立者山本栄と「友人」たち
  2 現場教師にとどまらない多様な会員
  3 設立目的―器楽教育の新たな課題への対応
 第2節 機関誌『器楽教育』にみる日本器楽教育連盟の事業
  1 実践者たちの経験が生かされた編集・発行体制
  2 地方の実践者にむけた各種事業
 第3節 日本器楽教育連盟と全日本学校器楽合奏コンクール
  1 コンクール運営の中心を担った連盟
  2 器楽教育普及に伴うコンクールの規模拡大
  3 コンクールの功罪
 小結―機関誌『器楽教育』の改題と器楽教育の成立

終章
 第1節 器楽教育成立過程の構造的特徴
  1 教師たちの主体的実践と教育運動としての展開
  2 楽器産業界と教育界の相互依存構造
  3 器楽教育の実践を支えた思想とそのジレンマ
    ―特異な合奏形態形成の要因
 第2節 今後の研究課題

史料および参考文献一覧
あとがき
著者樫下達也 著
発行年月日2019年01月31日
頁数366頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-2254-7