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漱石がいた熊本

定価: 2,530 (本体 2,300 円+税)

漱石没後100年・生誕150年を記念して西日本新聞(熊本県版)に連載された「漱石がいた熊本」を再構成。熊本での暮らし、家族、教師生活、英国留学、漱石をめぐる人々。漱石のいた熊本の風景に思いを馳せるとき、漱石はより身近に感じられる。

【著者略歴】
村田 由美(むらた ゆみ)

熊本市生まれ。日本女子大学大学院文学研究科日本文学専攻博士課程前期修了。『五高と漱石』監修・共著(五高記念館、2016・3)、『特集 夏目漱石』(『花美術館』、蒼海出版、2016・10)。現在、熊本大学五高記念館客員准教授、玉名市草枕交流館館長。
目次を表示します。
はじめに
一 暮らし
熊本到着
 ①心にとどめた新坂の風景
 ②「森の都」とは言っていない
 ③借家の少なさに不快さも
住居
 ①引っ越しの顚末―七軒のうち三軒が現存
 ②「敗屋」こそが光琳寺町の家
 ③間数の多い合羽町の家
 ④曲折経て残る大江村の家
 ⑤空襲で焼失した井川淵町の家
 ⑥増築された内坪井町の家
 ⑦唯一漱石の希望で転居した北千反畑町の家
暮らしぶり
 ①所得税一八円で「長者」の一人に
 ②東京と熊本の風呂事情
 ③漱石が吸った煙草
 ④本当は犬派だった漱石
 ⑤年賀式に愛媛中校長・住田も出席
戦争
 ①日清戦争の凱旋出迎え
 ②徴兵忌避は漱石だけではない
 ③調子外れで軍歌を歌う
二 家族
漱石誕生
 正月生まれの金之助
父母
 ①父(上)―父に抱いた複雑な感情
 ②父(下)―後年変化した父への思い
夫婦
 ①結婚式(上)―明治二九年六月一〇日挙式説
 ②結婚式(下)―婚礼は九日夕、一〇日夕は雨
 ③挙式六日後に明治三陸地震
 ④オタンチンノパレオラガス
 ⑤妻を詠むまなざし
 ⑥鏡子の「身投げ」は事故
 ⑦ 筆子の誕生と乳母車
三 教師生活
松山時代
 ①松山では校長排斥運動に嫌気
 ②「愚見数則」で心情を吐露
 ③二九歳の春、熊本へ
英語教師
 ①期待を受け五高の英語教師に
 ②尊敬された真面目な英語教師
 ③敬服する学生たち
 ④福岡、佐賀の中学校参観(上)
 ⑤福岡、佐賀の中学校参観(下)―英語力低下を憂える
 ⑥五高入試(上)―応用利かぬ英語を嘆く
 ⑦五高入試(下)―聴き取り問題の重視
 ⑧漱石の済々黌講師説は誤り
 ⑨熊本時代に英文学評論を三本発表
端艇部部長
 ①スポーツマン漱石
 ②新聞に「夏目部長」と明記
 ③部長辞任のいきさつ
学校人事
 ①漱石が行った人事(上)―恨みは買っていない
 ②漱石が行った人事(中)―「教師放逐」を建議
 ③漱石が行った人事(下)―能力・人柄重視
学校行事
 ①開校紀念式「祝辞」(上)―代筆論争
 ②開校紀念式「祝辞」(下)―間違いなく発想は本人
 ③立錐の余地もない「近来稀の運動会」
 ④済々黌と鹿児島県尋常中の大騒動
 ⑤行軍演習だった修学旅行
 ⑥各地で生徒の歓迎を受けた修学旅行
 ⑦最初の修学旅行で天草島原へ
 ⑧拝賀式での不敬事件
 ⑨五高での天然痘騒ぎ
 ⑩自炊記念日で熊本、鹿児島県人が衝突
 ⑪招魂祭―五高生も撃剣披露
四 旅行・俳句
旅行
 ①新婚旅行で福岡の名所旧跡へ
 ②久留米旅行と「漱石の道」
 ③「草枕」の旅(上)―出発日は二八か二九か
 ④「草枕」の旅(中)―野出にもあった峠の茶屋
 ⑤「草枕」の旅(下)―「小天」が舞台と地元は直感
 ⑥耶馬溪の旅
 ⑦阿蘇登山、通説「四泊五日」の真偽
 ⑧「二百十日」には「出張記録」が使われた
俳句
 ①漱石が聞いた午砲
 ②紫溟吟社(上)―内坪井町の家で誕生
 ③紫溟吟社(中)―陸軍、町方の有志も参加
 ④紫溟吟社(下)―選句はしても指導はせず
 ⑤紫溟吟社の終焉
 ⑥もう一人の漱石
 ⑦紫溟吟社以前(上)―無名氏、失名は漱石
 ⑧紫溟吟社以前(中)―「枕水」は安東真人か
 ⑨紫溟吟社以前(下)―名を伏せた理由
 ⑩漱石が詠んだ自転車の句
 ⑪藤崎宮大祭の藤祭りを詠む
 ⑫五高雑詠に確かな漱石の足跡
 ⑬多く詠まれた「水前寺」「江津湖」の俳句
 ⑭俳句より漢詩を披瀝
五 漱石をめぐる人々
書生
 最初の書生・俣野義郎
狩野亨吉
 ①漱石、中川の要請で五高に赴任
 ②漱石との交流を記したメモ
 ③一高校長へ転任
寺田寅彦
 ①点を貰いに漱石を訪問
 ②明治の熊本で青春謳歌
 ③俳句で結ばれた師弟の縁
山川信次郎
 ①一高転任へ漱石が尽力
 ②醜聞事件で一高を去る
 ③五高に再奉職、そして再び東京へ
森鷗外
 鷗外来熊、一日半の滞在で史跡巡り
六 英国留学と帰国後
英国留学
 ①「高等学校教授初」の留学は誤り
 ②豪雨の合間、列車で熊本を発つ
 ③往復書簡にみる夫婦の絆
 ④申報書(上)―留学生活の転換を示す
 ⑤申報書(下)―過酷な留学生活を証明
 ⑥子規の訃報に「慚愧の至」
帰国後
 ①漱石、惜しまれつつ五高辞職
 ②「三四郎」は漱石が見た熊本時代の五高生
 ③熊本体験が名作誕生へ

 あとがき
 熊本時代の年表
 参考文献
著者村田由美 著
発行年月日2019年05月15日
頁数346頁
判型 四六
ISBNコード978-4-7599-2283-7
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