博士論文・心理学・教育学など書籍・学術出版社|(株)風間書房

ポピュラーカルチャーの詩学

日本語の文字に秘められたマルチモダリティ

定価: 2,750 (本体 2,500 円+税)

20世紀の国語学議論「文字とは何か」が21世紀のマルチモダリティ社会記号論でよみがえる。独創的な表現で、規範や既存の表現を変える力があるポピュラーカルチャーを対象に、日本語の文字が表出するマルチモーダルな意味表現を検討。世界一難解な表記体系を持つ日本語の教育に携わる人必読の書。

【著者略歴】
松田 結貴(まつだ ゆき)

大阪府に生まれる。
南カリフォルニア大学大学院(言語学専攻)博士課程修了。
学位:言語学博士 Ph.D. (The University of Southern California)。
現職:米国テネシー州立メンフィス大学 外国言語・文学学科 准教授 日本語プログラム主任。
専門領域:日本語教育・言語学・日本語学。
本著内容に関する主論文(英文・和文)と翻訳:「少年マンガに見る『表現としての振仮名』と日本語表記のマルチモダリティ 」(『ことばと文字』10、2018年)。Expressing Ambivalent Identities through Popular Music: Socio-Cultural Analysis of Japanese Writing Systems (Southeast Review of Asian Studies, Vol.39, 2017). 翻訳:著者 Burn, Andrew.『参加型文化の時代におけるメディア・リテラシー:言葉・映像・文化の学習』(共訳、くろしお出版、2017年)、ほか多数。
主な社会・教育活動:米国ETS (Education Testing Service)・カレッジボード、AP日本語開発委員会初代委員。
目次を表示します。
序章 ビジュアル・カルチャーと日本語
第1章 ポピュラーカルチャーの詩学
 1.1. 世界に広がる日本のポピュラーカルチャー
  1.1.1. ポピュラーカルチャーの日本語
  1.1.2. 社会と言葉を変えるポピュラーカルチャーの表現
 1.2. 複数の文字体系を持つ日本語
  1.2.1. カタカナとひらがなの対峙性
  1.2.2. 複数の文字体系を持つ意義
 1.3. ビジュアル情報の優位性
  1.3.1. 絵文字の開発
  1.3.2. 文字が表現する「ヴォイス」とメラビアンの法則
  1.3.3. NHKをやさしく
 1.4. 本書の理論的背景
  1.4.1. マルチモーダル・コミュニケーション
  1.4.2. 世界一難解な書記コミュニケーションの習得
  1.4.3. 表記規範の変化
  1.4.4. 縦書き・横書きとその混用
第2章 複数の文字体系を持つ日本語
 2.1. 日本語の文字化
  2.1.1. 日本国憲法の表記に関する「大事件」
  2.1.2. ひらがな文とビジュアル・カルチャーの起源
  2.1.3. ひらがなと虚構の物語
  2.1.4. 時代のポピュラーカルチャー『竹取物語』
  2.1.5. 漢文訓読から生まれたカタカナ
  2.1.6. 和文・漢文・和漢混淆文
 2.2. 外来語の表記
  2.2.1. 日本語のローマ字綴り
  2.2.2. ローマ字綴りのキリシタン文献
  2.2.3. 外来語のカタカナ表記
  2.2.4. 文字のビジュアルな表現力
第3章 文字のマルチモダリティ
 3.1. 文字表記の「意味」
  3.1.1. 文字種の「イメージ」
  3.1.2. メイナード(2008)
   3.1.2.1. バーバル記号とビジュアル記号の「相乗効果」
   3.1.2.2. 活字イメージと「楽しさ」の表現
   3.1.2.3. 夢を与えるローマ字
  3.1.3. 縦書きのローマ字表記
 3.2. イメージとしての文字
  3.3.2. マルチモダリティ理論 Kress & van Leeuwen(2001), Kress(2010)
  3.3.3. ビジュアルな文字の意味
 3.3. マルチモーダル・コミュニケーションと意味の一貫性
  3.3.1. デザインとしての書体
  3.3.2. ひらがなが喚起する「やさしい」イメージ
  3.3.3. 主体の意図とコミュニケーションの目的
  3.3.4. コミュニケーションの修辞学的なアプローチ
 3.4. 文字が表出するヴォイスの多重性
  3.4.1. 「キャラクター・スピーク」
  3.4.2. 「役割語」とキャラクターのヴォイス
第4章 ルビ表現の詩学
 4.1. なぜルビを使うのか
 4.2. 「表現」としての振仮名の誕生
 4.3. 「ポリフォニー」としてのルビ表現
 4.4. 情報伝達としてのルビ、詩的表現としてのルビ
  4.4.1. 「やさしいニュース」とルビ表現
  4.4.2. 文芸作品に見られるルビ表現
第5章 ストーリー・マンガの詩学
 5.1. ストーリー・マンガ
  5.1.1. 戦後のビジュアル・カルチャー
  5.1.2. ビジュアル記号としての文字
  5.1.3. 絵記号としてのオノマトペ
  5.1.4. マンガの創作漢字
  5.1.5. 漢字語で表現するパラレルワールド
  5.1.6. カタカナ・ローマ字で表現する武士道
  5.1.7. スポーツマンガの漢字
 5.2. マンガ表現としてのルビ
  5.2.1. 指示代名詞と多重のヴォイス
  5.2.2. 多重のヴォイスの「ポリフォニー」
第6章 ポピュラーソングの文字
 6.1. 文字のマルチモダリティ
  6.1.1. 日本のポピュラーソングとジャンル
  6.1.2. 卒業ソングの活字イメージ
 6.2. Picture Poems(視覚詩)
  6.2.1. ファンが創る「リリックビデオ」
  6.2.2. ローマ字で詠む短歌
 6.3. 4 種の文字の混用文
  6.3.1. コードスイッチングとコードの曖昧化
  6.3.2. コードの「間ジャンル性」
 6.4. グローバルな和語のヴォイス
  6.4.1. J-POPのタイトルの推移
  6.4.2. クールジャパンと和語
第7章  マルチモーダル・コミュニケーション能力と言語教育
 7.1. マルチモーダル・コミュニケーション能力
  7.1.1. 日本語リテラシーの習得
  7.1.2. 状況的学習
  7.1.3. Social Networking Approach
  7.1.4. 「 本物」の目的を持ったマルチモーダル・コミュニケーション
  7.1.5. コミュニケーションの「再デザイン」
  7.1.6. 国語科でのメディア・リテラシー教育実践
  7.1.7. ポピュラーカルチャーを日本語教育へ
 7.2. 動画プロジェクト
  7.2.1. プロジェクトの概略
  7.2.2. 奈良市観光動画のテキスト分析
  7.2.3. 動画の解釈と評価活動
  7.2.4. 再デザイン活動
  7.2.5. 動画制作のためのストーリーボード
  7.2.6. 文字表記に見る地元PR動画の表現
  7.2.7. 動画プロジェクトの評価
  7.2.8. まとめと今後の課題
終章 文字とは何か
 参考文献
 あとがき
 人名索引
 事項索引
著者松田結貴 著
発行年月日2019年05月15日
頁数218頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-2285-1
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