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岡倉由三郎と近代日本

英語と向き合う知の軌跡

定価: 12,100 (本体 11,000 円+税)

現代のグローバル世界と英語の覇権をみすえながら、岡倉由三郎の思想と活動に即して「英語」をめぐる近代日本の知の軌跡を探究し、今日的なあり方を再考する。


著者略歴
平田諭治(ひらた ゆうじ)
1967年、福井県生まれ。広島大学大学院教育学研究科博士課程修了、博士(教育学)。日本学術振興会特別研究員、広島大学助手、鳴門教育大学助教授などをへて、現在、筑波大学人間系(教育学域)准教授、専門は日本教育史。おもな著作として、単著に『教育勅語国際関係史の研究―官定翻訳教育勅語を中心として』(風間書房)、編著に『日本教育史』(MINERVAはじめて学ぶ教職4、ミネルヴァ書房)、共著に『学校教育と国民の形成』(講座現代学校教育の高度化25、学文社)、分担執筆に『共生と希望の教育学』(筑波大学出版会)など。日本比較教育学会「平塚賞」、日本教育史学会「石川謙日本教育史研究奨励賞」受賞。
目次を表示します。
 序章 本書の趣旨と目的
  第一節 問題の所在―グローバル世界と英語
  第二節 対象と課題―なぜ岡倉由三郎なのか
    一 英語の受容と教育・研究
    二 英語での「日本」の語り
  第三節 資料と構成
    一 岡倉由三郎に関する資料
    二 各章で論じること
  注

第Ⅰ部 英語を受け入れる―近代日本の形成と言語という問題

 第一章 生い立ちと思想形成―一八六八年~一九〇〇年頃
  はじめに
  第一節 ライフヒストリーとその語り
    一 遍歴のキャリア
    二 回想的語りについて
  第二節 生活世界と岡倉覚三(天心)
    一 家と父と兄
    二 天心というアンビバレンス
  第三節 帝国大学選科とB・H・チェンバレン
    一 外国人教師チェンバレン
    二 選科生という経験
  第四節 チェンバレンの授業とその世界
    一 「日本文典」について
    二 「比較博言学」について
    三 W・D・ホイットニーのインパクト
  第五節 「国語」の制度化と上田万年
    一 「国語」づくりの動向
    二 「外国語」との関係
  おわりに
  注

 第二章 一八九〇年の最初の著作にみる言語思想
  はじめに
  第一節 『日本語学一斑』について
  第二節 『日本語学一斑』の概要とW・D・ホイットニーの位置
    一 『日本語学一斑』の概略と特徴
    二 W・D・ホイットニーとその著作
  第三節 ホイットニー言語論の受容と変奏
    一 基本的な言語観
    二 言語習得と教育
    三 第二言語/外国語
  おわりに
  注

 第三章 一九〇一年度文部省外国留学生として
  はじめに
  第一節 留学生の拡大方針と規制強化
  第二節 留学をめぐる経緯と背景
    一 上田万年と英語学・語学教授法
    二 内地雑居と外国語の問題
  第三節 ヨーロッパにおける留学の実際
    一 イギリスでの活動
    二 フランスでの活動
    三 ドイツでの活動
  おわりに
  注

第Ⅱ部 英語で語る(一)―イギリスにおける近代日本の紹介

 第四章 一九〇五年のロンドン大学における講演
  はじめに
  第一節 ロンドン大学側のいきさつ
    一 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス
    二 J・Ⅿ・ホワイトという篤志家
    三 社会学の講義と講座の開設
  第二節 講師と題目をめぐる曲折
    一 Ⅼ・ハーンと「日本の文明」
    二 岡倉への要請と演題の決定
  第三節 講演の概要
  おわりに
  注

 第五章 『ザ・ジャパニーズ・スピリット』(一九〇五年)
  はじめに
  第一節 出版と構成
  第二節 主題と先行文献
    一 研究対象としての「日本」
    二 チェンバレンと覚三の著作
  第三節 内容と特徴―チェンバレン、覚三との間
    一 「日本人」のルーツと神話の世界
    二 「日本(人)の精神」の歴史的形成
  おわりに
  注

 第六章 『ザ・ジャパニーズ・スピリット』の読まれ方
  はじめに
  第一節 欧米社会の反応・反響と評価
  第二節 語られた「日本」の受け止め方
  第三節 G・メレディスにおける「日本」
  おわりに
  注

第Ⅲ部 英語で語る(二)―アメリカにおける近代日本の紹介

 第七章 一九一〇年のボストンにおける講演
  はじめに
  第一節 渡米のいきさつ
  第二節 ローエル・インスティテュート
  第三節 講演の概要
    一 どのように臨んだのか
    二 なにを・いかに語ったのか
  おわりに
  注

第八章 『ザ・ライフ・アンド・ソート・オブ・ジャパン』(一九一三年)
  はじめに
  第一節 出版の経緯と背景
  第二節 構成と主題
  第三節 内容と特徴―テクストと語り方
    一 「日本」の自己表現とイメージ戦略
    二 「西洋」批判と「西洋」受容のなかの天皇
    三 「西洋」対「東洋」と「日本」の位置
  おわりに
  注
第九章 『ザ・ライフ・アンド・ソート・オブ・ジャパン』の読まれ方
  はじめに
  第一節 新聞・雑誌の取り上げ方
  第二節 『アジア評論』にみるパターナリズム
  第三節 『サタデー・レビュー』にみるレイシズム
  第四節 『ボストン・トランスクリプト』にみる表象の臨界
  第五節 『ネイション』にみるナショナリズム
  おわりに
  注

第Ⅳ部 世界そして英語を問う―近代日本の転換と行方

 第一〇章 一九三一年の美術使節として
  はじめに
  第一節 トリード美術館の展覧会
  第二節 美術使節の派遣について
    一 日米の事情と利害・思惑
    二 横山大観の代役として
  第三節 美術使節としての活動
  第四節 日本画についての語り
    一 ニューヨークでのラジオ放送
    二 レーリッヒ美術館のカタログ
  おわりに
  注

 第一一章 「国際語としての英語」を求めて
  はじめに
  第一節 第一次世界大戦後の国際語の希求と日本の状況
    一 ベーシック・イングリッシュ
    二 H・E・パーマーと日本の「失敗」
  第二節 N・Ⅿ・バトラーへの要請とⅭ・K・オグデンとの交流
    一 アメリカでの英語世界語論
    二 イギリスでのオグデン詣で
  第三節 ベーシック・イングリッシュをめぐる取り組み
    一 洋々塾とロックフェラー財団の助成
    二 「基本英語文庫」について
    三 実験的・実践的な開発構想
  第四節 スペリング・リフォームをめぐる取り組み
    一 アングリックへのまなざし
    二 Y・O・Kアルファベットの提案
  おわりに
  注

 終章 まとめと展望
  第一節 要約―英語と向き合う近代日本の知の軌跡
    一 英語の受け入れ方と近代日本の形成
    二 英語での語り方と近代日本の展開
    三 世界/英語の問い方と近代日本の転換
  第二節 総括―岡倉の思想と活動の要点
    一 「英学」からの脱却と継承
    二 「英語教育」の思想的基盤
  第三節 現代の再審―グローバル世界と英語を問い直す
    一 グローバル化ともたれ合う英語教育改革の磁場
    二 放置される「外国語」と「国際語」のねじれ
    三 「英語」と向き合うということ
  注

あとがき
索引
著者平田諭治 著
発行年月日2023年03月31日
頁数616頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-2457-2