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患者に対する精神的援助に関する研究

現象学的方法による“病気との和解”の方途を探って

定価: 12,100 (本体 11,000 円+税)
現象学的方法を対人・対話関係に見定め、病気像、病気との和解、体験学習を鍵に、病者の精神的健康の実現に向けた研究の成果を提示し、人間医療の実現を問う。

【著者略歴】
上野 矗(うえの ひとし)
1937年 長野県長野市に生まれる
1967年 東北大学大学院文学研究科心理学専攻博士課程修了
1992年 医学博士(久留米大学)
白梅学園短期大学講師、弘前大学養護教諭養成所助教授を経て、
1973年より大阪教育大学助教授となり、現在同大学教授
目次を表示します。
はしがき
Ⅰ 心理学がからだの病気の研究において担う問題及び展望に関する検討 
 1.病気への関心
 2.一般医科における“病気観”の変遷
 3.からだの病気に対するこれまでの心理学的アプローチ
 4.意味体験事象としての病気―「病気像」(Disease Image)への着目
Ⅱ からだの病気の研究にかかわる心理学の方法論としての現象学的方法に関する検討
 1.心理学のなかの現象学 
  1)論者の現象学との出会い 
  2)心理学と現象学とのかかわり
 2.現象学から受けとり,示唆をえて,方法論的基盤を明確化し,これを心理学に具体化する試み 
  1)科学としての心理学における方法
  2)心理学の「危機」とその克服への道(1)
   あるがままに:「事象そのものへ」
  3)心理学の「危機」とその克服への道(2)問う者が同時に問われる者
  4)心理学の「危機」とその克服への道(3)主客融合の思考へ
    ―その1 人間観をめぐって
  5)心理学の「危機」とその克服への道(4)主客融合の思考へ
    ―その2 心身関係をめぐって
  6)心理学の「危機」とその克服への道(5)主客融合の思考へ
    ―その3 客観性をめぐって
 3.現象学から受けとり,えた示唆をからだの病気の患者への援助的理解の心理学に具体化する試み 
  1)主体としての自我・自己をめぐって
  2)身体をめぐって
  3)感情をめぐって 
  4)関係をめぐって 
  5)いま,ここを,ともに 
Ⅲ 現象学的方法の具体化としての「対人・対話関係」に関する検討
 1.対人・対話関係の実現にかかわる「体験学習:小集団における気づきの自由な話し合い」の企て 
  1)「体験学習:小集団における気づきの自由な話し合い」との解逅 
  2)「体験学習:小集団における気づきの自由な話し合い」とは何か 
 2.「体験学習:小集軌こおける気づきの自由な話し合い」の実践
   ―ナースの場合を例に 
  1)この「体験学習」への導入 
  2)この「体験学習」のプロセスの概要
  3)この「体験学習」のプロセス展開の意味
 3.「体験学習:小集団における気づきの自由な話し合い」から開らかれてくる援助的理解の主体のすがた:問う者が問われるとき
  1)意識の変容から 
  2)自我指標の変容から(1)
  3)自我指標の変容から(2)
Ⅳ 現象学的方法の視座から,からだの病気の研究に開らける新しい視界と展望に関する検討
 1.病気像(Disease Image)提唱の意義と展望 
  1)外側からの客観的方法の偏重からの脱却 
  2)心身二元論的な対立からの脱却 
  3)人にとってリアルで客観的な病気世界へ迫りうること 
  4)患者への援助的理解が可能となること 
  5)健康者の病気と密着した生活にアプローチできること 
 2.病気像の諸検討から開らける援助的理解―「病気との和解」
  1)援助的理解をめぐって
  2)病気との和解の実現に向けた視界とその実際 
 3.「病気との和解」の象徴的モデルとしての体験学習
  1)「病気であること」と「体験学習に臨むこと」との意味体験状況の類似性 
  2)「病気であること」と「体験学習に臨むこと」との意味体験状況,プロセス,そしてそこから開らける世界の類似性
    ―病気との和解的あり方から 
  3)「病気であること」と「体験学習に臨むこと」との意味体験状況,プロセス,そしてそれから開らける世界の類似性
    ―「体験学習におけるグループの受容体験」から
Ⅴ 患者の「病気との和解」実現の方途に関するナースの「体験学習」の成果からの検討
 1.病気との和解実現の方途を探ぐる検討
   ―「体験学習」におけるグループの受容体験をモデルとした調査研究
  1)問題 
  2)手続き 
  3)結果 
  4)考察 
 2.患者の病気との和解実現にかかわるナースの体験学習の成果に関する調査研究
   ―グループの受容体験をえたナースによる「病気像調査票」の実施を通じて
  1)問題
  2)手続き 
  3)結果 
  4)考察 
  5)今後の展望 
おわりに 
著者上野矗 著
発行年月日1994年02月28日
頁数212頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-0865-7