博士論文・心理学・教育学など書籍・学術出版社|(株)風間書房

アメリカ公教育思想形成の史的研究

ボストンにおける公教育普及と教育統治

定価: 11,000 (本体 10,000 円+税)

アメリカの公教育思想形成の史的展開を政治・経済・宗教・文化などの多角的・重層的な視点から解明。ボストンのエリート階級による博愛思想に基づく公教育思想の成立に注目した研究。

【著者略歴】
北野秋男(きたの あきお)
1955年 富山県に生まれる
1979年 日本大学大学院文学研究科前期博士課程入学
1984年 日本大学大学院文学研究科後期博士課程満期退学
1984年 日本大学文理学部助手
1990年 日本大学国際関係学部専任講師
1995年 日本大学文理学部助教授
1999年 ボストン大学教育学大学院客員研究員(1年間)
2001年 日本大学文理学部教授
2001年 日本大学大学院総合社会情報研究科教授
2002年 日本大学より博士(教育学)の学位取得
現在 日本大学文理学部教授、日本大学大学院総合社会情報研究科教授
※略歴は刊行当時のものです※
目次を表示します。
はしがき
序章 本書の構成と研究課題
第1節 本研究の意義と課題
(1)本研究の意義と課題
(2)本書の構成
第2節 本研究の課題と先行研究
(1)ウッドとディギンズの先行研究
(2)タイアックとストーリイらの先行研究
(3)フーコー、ホーガン、田中の先行研究
第3節 アメリカ公教育史研究の再検討
(1)カッツやシュルツの先行研究
(2)リヴィジョニストの問題点
第4節 本研究の主なる第一次史料
第1部 独立革命期における公教育思想の形成
第1章 独立革命と公教育思想の形成
第1節 独立革命と人民の有徳化
(1)アメリカ民族の統一と自律
(2)ジョンの思想形成と初期の著作
(3)知識と自由への信頼
第2節 マサチューセッツ州の公教育制度の確立
(1)公共の徳や善の普及
(2)マサチューセッツ州憲法の制定
(3)州憲法における教育規定
(4)教育法(1789年)の制定
第3節 ボストンの公教育制度の確立
(1)サミュエルの思想形成
(2)サミュエルのピューリタン倫理思想
(3)ボストン教育法(1789年)の成立過程
(4)ボストン教育法の制定
第4節 ピューリタン倫理への回帰
(1)サミュエルの抵抗運動
(2)サミュエルの自然権思想
(3)ピューリタン倫理思想の内容
(4)最後のピューリタン
(5)ピューリタン倫理への回帰
第2章 公教育思想をめぐる対立
第1節 天性の貴族への信頼
(1)民衆に対する不信
(2)人間の情念への懐疑
(3)天性の貴族による統治
第2節 コモン・マンへの信頼
(1)ジョンの混合政体論
(2)モンテスキューの権力分立論の影響
(3)サミュエルの「コモン・マン」への信頼
(4)サミュエルのエリート階級批判
(5)サミュエルの思想的な限界
第3節 公教育思想をめぐる対立
(1)ジョンとサミュエルの往復書簡
(2)サミュエルの公教育支持論
(3)ジョンの公教育否定論
(4)権力メカニズムによる統治
(5)ナショナル・プランの消滅
第4節 サミュエルの失意と政治的敗北
(1)アカデミー普及への危倶
(2)サミュエルの夢と現実
第3章 独立革命後における公教育の実態
第1節 アカデミーの台頭と公教育普及の後退
(1)教育法(1789年)の内容
(2)新たな教育法の制定
(3)アカデミーの台頭
(4)ボストンの公教育制度の実情
第2節 理論算術と暗記・暗誦
(1)教室空間の管理者としての教師
(2)理論算術の教科書
(3)パイクの教科書
第3節 教義問答形式による授業
(1)モースの教科書
(2)ボストン教師サイヤーの批判
(3)「読み方」と「綴り方」の授業
(4)ウェブスターの「アルファベット・メソッド」
第4節 ドリル・マスターとしての教師
(1)「書法」の授業指導
(2)教師の任命と雇用の問題
第2部 ボストン・エリートにおける公教育思想の形成
第4章 ボストン・エリートの形成と公教育思想
第1節 独立革命と経済的自由主義
(1)アメリカの労働倫理
(2)ピューリタン倫理における「富」概念
(3)ロックの所有権思想とアメリカの独立革命
第2節 新エリート階級の形成
(1)ワシントン追悼式の風景
(2)「ボストン・アソシエイツ」の形成
(3)「ボストン工業会社」の設立
第3節 ボストン・エリートの富と救済の観念
(1)ボストン・エリートの富の蓄積
(2)ボストン・エリートの文化的・博愛的な諸活動
(3)徳の最良の学校
(4)アメリカのアテネ
第4節 ウェイランドにおける「良心」の形成
(1)自己利益のあくなき追求
(2)チャニングとウエイランドの立場
(3)ウエイランドの道徳性
(4)ウエイランドの「良心」の意味
(5)道徳的権威の確立
第5節 マンの道徳教育論
(1)マンの道徳教育論
(2)マンのレトリック
(3)功利主義的な教育論
第5章 ボストン・エリートの文化的・博愛的な諸活動と教育の普及
第1節 ボストン・エリートの社会的特質
(1)ボストン・エリートの自生的な統治
(2)ボストン・エリートの政治的特質
(3)ボストン・エリートの宗教的特質
(4)血縁関係によるネットワーク作り
第2節 ボストン・エリートの文化的・博愛的活動
(1)人道主義者グループの諸活動
(2)ボストン・アスィ一二アム
(3)アスィーニアムの特権性と閉鎖性
(4)エヴァンジェリスト・グループの諸活動
第3節 ハーバード大学の拡張と発展
(1)ハーバード大学とボストン・エリートの関係性
(2)180万ドルの寄付とハーバードの発展
(3)ハーバードの教授職の増加
第4節 ハーバード大学の政治的・宗教的対立
(1)神学教授職をめぐる対立
(2)学長職をめぐる対立
(3)ハーバード評議員の宗教的・政治的特色
第6章 W .E.チャニングの自己陶冶と公教育の思想
第1節 ユニテリアン主義の起源と普及
(1)ユニテリアン主義と公教育思想
(2)リベラル派神学の形成
(3)アメリカ初のユニテリアン牧師の誕生
(4) ハーバードの伝統の崩壊
第2節 チャニングのユニテリアン神学思想
(1)チャニングの思想形成
(2)「理性」と「神の道徳的な完全性」
(3)アメリカ・ユニテリアン協会会長
第3節 自律的な主体形成としての「自己陶冶」思想
(1)自律的な人格形成
(2)「自己陶冶」の諸原理
(3)「自己陶冶」の手段
第4節 公教育普及による社会改革
(1)子どもへの愛と慈しみ
(2)社会の究極的な目的
(3)チャニングの公教育思想
(4)チャニングの社会改革思想
第5節 チャニングの公教育普及の活動
(1)公教育普及の諸活動
(2)公教育普及の社会的要因
(3)近代の教育目的論
第7章 公教育制度改革と公教育システムの確立
第1節 ボストンの公教育制度改革と公教育普及
(1)ボストンの公教育制度研究の意味
(2)ボストン公教育制度改革
(3)1820年代におけるボストンの公教育制度
第2節 初等教育制度の改革
(1)プライマリー・スクール設立の請願運動
(2)特別委員会の報告
(3)再度の請願運動
第3節 アフリカン・スクールの設立運動
(1)独立後のアフリカン・スクール設立運動
(2)黒人教育に対する差別の始まり
(3)チャニングの奴隷制廃止の思想
第4節 中等教育制度の改革
(1)ボストン・ラテン・スクールの卒業生
(2)ハーバード大学への進学準備機関
(3)ボストン・ラテン・スクールのカリキュラム改革
(4)イングリッシュ・クラシカル・スクールの開校
第5節 公教育管理システムの形成
(1)ボストン学務委員会の組織と任務
(2)ボストン・エリートと学務委員会
第3部 新たな教授学思想の起源
第8章 W .B.フォールの教授改革思想
第1節 モニトリアル・スクールの開校
(1)ボストンにおける教授思想と教授実践
(2)モニトリアル・スクールの開校 
(3)フォールの教授改革プラン
第2節 学校運営と教授法改革
(1)女子モニトリアル・スクールの開校
(2)女子モニトリアル・スクール理事会の支援
(3)学校運営とモニター制度
(4)クインシー市長の支持
第3節 モニトリアル・スクールの授業実践
(1)「読み方」と「書き取り」の授業内容
(2)「算術」と「地理」の授業内容
(3)問答形式の授業実践
第4節 モニトリアル・システムに対する批判
(1)ボストン公立学校教師の抵抗
(2)ボストン市民、カーター、マンの批判
(3)モニトリアル・システムの消滅
第5節 競争と強制による生徒管理
(1)モニトリアル・システムの監視と競争システム
(2)近代的な学校管理システム
第9章 J.G.カーターの教授科学思想
第1節 伝統的な教育に対する批判
(1)先行研究におけるカーターの評価
(2)『プレスコット卿への手紙』
(3)『民衆教育論』
第2節 公教育制度改革の思想
(1)教授科学の確立と教員養成
(2)専門的な教員養成機関
(3)教科書の重要性
第3節 教授科学の提唱
(1)ベーコンの帰納法原理の応用
(2)帰納法原理の教育への適用
(3)「分析的な方法」原理
第4節 教授科学思想の展開
(1)「言語」科目への適用
(2)「算術」科目への適用
(3)近代的な教授学思想の起源
第10章 新たな教授学思想の形成
第1節 「ニューイングランド・ペダゴジー」の教授学思想
(1)「ニューイングランド・ペダゴジー」の登場
(2)「ニューイングランド・ペダゴジー」の思想的背景
(3)近代的な教育思想の意味
第2節 新たな教授学思想の提唱と教授実践
(1)コルバーンの算術教授理論
(2)初歩的な計算問題の例
(3)コルバーンの算術教科書への評価
(4)レイの算術教科書
(5)教義問答形式の算術授業
第3節 マンとボストン公立学校教師の教育論争
(1)愛による教師―生徒の関係
(2)マンとボストン公立学校教師の体罰論争
(3)教育的権威に関する見解の対立
第4節 ウエイランドの教育による「良心」の形成
(1)未来を展望する伝統主義者
(2)道徳的な権威の代理人
(3)教育による「良心」の形成
第5節「内在的な権力」としての教授技術
(1)「愛」・「良心」・「理性」という監視装置
(2)近代教育の統治システム
終章 公教育普及と教育統治
第1節 アメリカ公教育思想形成の思想史的文脈
(1)独立革命期における公教育思想形成
(2)ボストン・エリートの形成と公教育思想形成
(3)教授学思想の形成と教授実践
第2節 教育における監視と規律
(1)内在的な監視装置
(2)教育の規律化装置
第3節 教育におけるメリトクラシーの論理
(1)初期メリトクラシーの論理
(2)属性主義的な選抜制度の確立
(3)エリート階級の再生産機能
(4)文化の支配と服従
第4節 公教育普及と教育統治
(1)公教育の受容と教化
(2)近代の教育統治システムの源流
(3)今後の研究課題
著者北野秋男 著
発行年月日2003年10月31日
頁数324頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-1390-3