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普遍性と可変性に基づく言語構造の構築メカニズム

用法基盤モデルから見た日本語文法における第一言語と第二言語習得の異同

定価: 7,700 (本体 7,000 円+税)
第一言語と第二言語習得の異同を探りつつ言語構造構築メカニズムの仮説を提示。長期フィールドワークと精密な分析から用法基盤モデルの有効性を実証的に示す意欲作。

【著者略歴】
橋本ゆかり(はしもと ゆかり)
東京生まれ,上智大学外国語学部卒業。三井物産株式会社勤務。退職後,翻訳業。
2005年,お茶の水女子大学大学院人間文化研究科言語文化専攻博士前期課程修了。
2008年,お茶の水女子大学大学院人間文化研究科国際日本学専攻博士後期課程修了。
博士(人文科学)。
お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科研究院研究員,日本大学,Vassar College非常勤講師などを経て,現在,お茶の水女子大学アカデミック・アシスタント,非常勤講師。千葉大学,早稲田大学非常勤講師,立教大学兼任講師。
専門は日本語教育,第二言語習得,認知言語学,日本語学。
目次を表示します。
第1章 本研究の目的と特徴
 1.1 はじめに
 1.2 本研究の目的
 1.3 本研究の特徴
  1.3.1 L2幼児対象の研究の位置づけ―L1幼児との対照
  1.3.2 用法基盤モデルとスキーマ生成の概念
  1.3.3 縦断研究によるプロセスの解明からメカニズムの特徴に関する仮説生成
 1.4 本研究において使用する用語の定義
  1.4.1 L2幼児
  1.4.2 中間言語,規範―TL(Target-Like)と非規範―NTL(Non-Target-Like)
 1.5 本論文の構成
 1.6 本章のまとめ
第2章 理論的背景と先行研究 情報処理・「固まり」と用法基盤モデル・日本語の構造
 2.1 情報処理に関する知見
  2.1.1 知覚―ゲシュタルト
  2.1.2 概念形成―カテゴリー,プロトタイプ
  2.1.3 知識の貯蓄―スキーマ
  2.1.4 記憶―チャンク(固まり)
 2.2 固まり習得
  2.2.1 丸暗記の固まり表現の定義
  2.2.2 2種類の固まり習得
  2.2.3 海外と日本における固まり習得の報告
  2.2.4 固まり習得と言語習得との連続性に関する議論
  2.2.5 用法基盤モデルの考え方と位置づけ
  2.2.6 固まり表現から文法ルール獲得に至るまでの言語操作
  2.2.7 固まり習得におけるL1とL2習得の差異
 2.3 日本語の構造の特徴と習得―動詞形を中心に
  2.3.1 日本語と英語の言語構造の違い
  2.3.2 L1幼児の日本語の動詞形習得
  2.3.3 動詞形のU字型の発達プロセス
 2.4 本章のまとめ
第3章 本研究の枠組み
 3.1 研究課題
  3.1.1 先行研究から導き出された研究課題に必要な3つの観点
  3.1.2 本研究の流れ―3つのステップ
  3.1.3 本研究の研究課題
 3.2 研究方法―資料作成と分析方法
  3.2.1 採用した研究方法
   3.2.1.1 発話採集と参与観察による縦断研究
   3.2.1.2 複合的な手法
  3.2.2 調査のための準備と調査時の心構え
  3.2.3 調査対象とした発話の種類
  3.2.4 文字起こし
  3.2.5 調査対象児のプロファイル
  3.2.6 分析方法
  3.2.7 研究方法における限界
 3.3 本章のまとめ
第4章 テンス・アスペクト形式の研究 
    プロセスにおける普遍的部分と可変的部分の追究 動詞形構造構築モデルの仮説提示
 4.1 はじめに
 4.2 先行研究
  4.2.1 日本語のテンス・アスペクト体系
  4.2.2 日本語学における動詞分類
  4.2.3 ル,タ,テイル,テイタの用法
  4.2.4 アスペクト仮説
 4.3 研究課題
 4.4 研究Ⅰ:K児におけるアスペクト仮説の傾向の確認
  4.4.1 下位課題
  4.4.2 研究方法
  4.4.3 下位課題ごとの結果と考察―普遍的習得順序にそって習得を進めるのか?
   4.4.3.1 下位課題AI-1の結果と考察
   4.4.3.2 下位課題AⅠ-2の結果と考察
  4.4.4 総合的考察とまとめ
 4.5 研究Ⅱ:B児におけるアスペクト仮説の傾向の確認と習得状況
  4.5.1 下位課題
  4.5.2 研究方法
  4.5.3 下位課題ごとの結果と考察―普遍的習得順序に沿って習得を進めるのか?
  4.5.4 総合的考察―プロトタイプからの習得と固まり習得との関連性
  4.5.5 まとめ
 4.6 研究ⅠとⅡの結果のまとめ
 4.7 研究Ⅲ:K児におけるテンス・アスペクト形式の習得状況
  4.7.1 はじめに
  4.7.2 先行研究
  4.7.3 下位課題
  4.7.4 研究方法
  4.7.5 分析結果と考察―なぜ,逸脱が見られたのか?
  4.7.6 総合的考察―L2幼児のスキーマ生成
  4.7.7 まとめ
 4.8 L2幼児の動詞形構造構築メカニズムの特徴
 4.9 本章のまとめ
第5章 否定形式の研究 ボトムアップ的暫定的ルール「スロット付きスキーマ」による動詞形構造構築モデルの検討
 5.1 はじめに
 5.2 先行研究
  5.2.1 日本語の否定形式の特徴
  5.2.2 海外における否定形式の習得研究
  5.2.3 L1幼児とL2学習者対象の研究
 5.3 研究課題
 5.4 研究方法
  5.4.1 研究資料
  5.4.2 分析方法
 5.5 分析結果と考察
  5.5.1 B児の否定形式習得プロセスの結果と考察
  5.5.2 K児の否定形式習得プロセスの結果と考察
  5.5.3 M児の否定形式習得プロセスの結果と考察
 5.6 結果のまとめと総合的考察―固まり習得からどのように否定形式を構築するのか?
  5.6.1 L2幼児の否定形習得プロセスのまとめ
  5.6.2 L1とL2幼児の習得プロセスの比較
  5.6.3 総合的考察
 5.7 本章のまとめ
第6章 可能形式の研究 動詞形構造構築モデルの検討
 6.1 はじめに
 6.2 先行研究
  6.2.1 日本語の可能形式の特徴
  6.2.2 L1幼児対象の研究
 6.3 研究課題
 6.4 研究方法
  6.4.1 研究資料
  6.4.2 分析方法
 6.5 分析結果と考察
  6.5.1 L1幼児の可能形式習得プロセス
  6.5.2 L2幼児の可能形式習得プロセス
  6.5.3 L2幼児の可能形式習得プロセスのまとめ―固まり習得からどのように可能形式を構築するのか?
  6.5.4 結果のまとめと総合的考察―L1とL2幼児の相違は何か?
 6.6 本章のまとめ
第7章 助詞の研究 動詞形構造構築モデルの拡大適用から文構造構築モデルの仮説提示へ
 7.1 はじめに
 7.2 先行研究
  7.2.1 助詞の種類
  7.2.2 L1幼児対象の研究
 7.3 研究課題
 7.4 研究方法
  7.4.1 研究資料
  7.4.2 分析方法
 7.5 分析結果と考察
  7.5.1 B児の助詞の習得プロセスの結果と考察
  7.5.2 K児の助詞の習得プロセスの結果と考察
  7.5.3 M児の助詞の習得プロセスの結果と考察
  7.5.4 M児の助詞の習得プロセスのまとめ
 7.6 結果のまとめと総合的考察―L2幼児の助詞の習得プロセスとL1との相違
 7.7 本章のまとめ
第8章 総括
 8.1 結果と統合的考察
  8.1.1 研究課題ごとの結果のまとめ
  8.1.2 言語構造構築メカニズム―L1とL2幼児における異同とその特徴
 8.2 本論文のまとめと研究史における意義―「スロット付きスキーマ合成仮説」の提案
 8.3 今後の課題
 8.4 幼児教育への示唆
参考文献
本論文内容と既発表論文との関係
あとがき
著者橋本ゆかり 著
発行年月日2011年12月25日
頁数288頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-1898-4

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